神社と狐憑きの女

 

「ホントなんだよ!

 

狐憑きの女を目の前で

見た事があるんだよ!」

 

ほろ酔いの男は、

そう力説する。

 

「またまた~

その時も酔ってたんでしょ~」

 

みんなでそう言って笑う。

 

「違う違う、

 

いや、飲んでたけどさ、

違うんだ!

 

もう、目付きがさ・・・

酔いも冷めちゃったよ」

 

そう言って男が語ったのが、

次のような話。

 

ある夜、

 

ちょっといいなあと思う

女の子と男は歩いていた。

 

ほろ酔いだし、

かなり上機嫌。

 

歩いていると、

神社が見えてきた。

 

二人で静かに話をするのには

もってこいだと、

 

男は彼女を誘った。

 

夜の神社はしんと静かだ。

 

このままいい雰囲気に持ち込めたら・・・

 

男がそんなスケベ心を出した、

その時!

 

女が獣のように吠え始めた。

 

ケンケンともキャンキャンとも、

ワンワンともつかない、

 

発声のしようのない声・・・。

 

男が女の顔を見れば、

 

ふんわりとした彼女の笑みは消え、

目がつり上がり、

 

理性などはとうに何処かに

消え失せた顔・・・。

 

これは、

もはや人の表情じゃない。

 

女は鳴き声を上げ、

境内を走り回る。

 

男の声など、

彼女の耳に届かない。

 

「それで彼女はどうなったの?」

 

そう尋ねたら・・・

 

「知らない。

 

怖くなってその場所から逃げた、

連絡も取っていない」

 

との事だった。

 

「ひどーい」

 

「・・・お前それ、

 

狐憑きのフリして、

結局はフラれてるんだよ」

 

皆で口々に言って笑い合うと、

男は・・・

 

「違うよ。

 

演技であそこまで目付きが

変わらないよ。

 

だからさ、

夜の神社は怖いよ。

 

行かない方がいい」

 

そう、彼は話を締めた。

 

怖い目に遭ったけれど、

 

その体験は酒の席での

鉄板の話題になった様子。

 

転んでもタダじゃ起きないって、

この事だね。

 

(終)

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