夜中に観てしまった生放送

夜中、私は一人でテレビを見ながら、

いつの間にかウトウトとしていました。

 

ふと気づくと、

なぜか部屋の電気は消え、

テレビの画面だけが

ぼおっと暗い闇に浮かび上がっています。

 

テレビ画面には、やたらと長い

石階段が映っています。

 

生放送なのでしょうか。

そこも暗闇に覆われています。

 

そして、まるで私が見るのを

待っていたかのように、

画面は階段の上へと移動しはじめました。

 

画面には全く登場人物がいません。

ナレーションもありません。

 

静かな暗闇の中、カメラマンをはじめ

スタッフらしき人たちの足音だけが、

コツコツと響いています。

 

やがて石段を昇りきり、

鳥居をくぐり、

境内の森の中へと

カメラは進んで行きます。

 

しばらくして、カメラはふと止まりました。

そして照明が落とされます。

画面は、ほとんど真っ暗です。

 

私は部屋の電気を点けるのも忘れて、

その真っ暗な画面を凝視し続けました。

 

かなり長い沈黙の後、

さっと白い影と明かりが

画面上を横切りました。

 

そして、また沈黙が続きます。

 

やがて「カーン、カーン」と、

釘を打つような音が聞えました。

 

数分間、その音は続き、

それが終わった後、

また白い影と明かりが

画面を横切りました。

 

また沈黙。

 

やっとすこしだけ照明が点き、

カメラは先ほど音がした方へと

近づいて行きます。

 

足音からして、

カメラマン以外にも、まだ数名のスタッフが

いるのでしょうが・・・。

 

私がテレビを見始めてから、

まだ一言も人間の声が聞えてきません。

 

さて、しばらくして、

カメラはひとつの木へ

どんどんと近づいて行きました。

 

その木の幹には、

藁人形が五寸釘で打ち付けられています。

 

その藁人形へさらにカメラが近づく。

 

そして・・・。

 

・・・見なければよかった。

 

その藁人形には私の名が書かれ、

私の写真が貼られてあったのです。

 

(終)

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