山林での肝試し中に見かけた不思議な幼児

満月

 

これは、私が中学生の頃の体験話。

 

林間学校で某県のO市へ行き、工程も全て終え、最終日の夜は『肝試し』をすることになっていた。

 

私のクラスは4人一組の9班と担任教師に別れ、滞在先の旅館から少し離れた山林を軽く一周してから下山してくる、というような内容だった。

 

コース中腹付近の広場には特に何があるというわけではないけれど、廃棄された鉄骨と丸石が、下2段と上1段に積まれた細長い形の物が置いてあった。

 

すでに4班が先行して私たちの順番が回ってきたので、サクサクと順路を進め、前述した広場までやってきた。

 

すると、班の誰かが「なんかいるよ、石の所…」と呟いたので、その先に目を向けると、丸石の上に白っぽい服を着た、男の子とも女の子とも言えない顔立ちの子供が立っていて、こちらをじっと見つめていた。

 

それを見た班の別の子は「キャッ!!」と悲鳴のような声を上げたけれど、どうするということもなく、その場を立ち去った。

 

終始その幼児はこちらを見ていたけれど、私は不思議と怖いといった感情などは湧いてこなかった。

 

広場を抜け、そそくさと旅館へ戻ると、なぜか広間が騒がしかった。

 

原因は女子生徒の半数が、大なり小なり声を上げて泣いていたから。

 

私はすぐに“あの事だ”とわかったけれど、あえて担任教師に事情を尋ねてみたところ、「山中でほとんどの生徒が不思議な子供を見た」との事だった。

 

あぁやっぱり…と、やけに冷静に感じていた自分を覚えている。

 

翌日、朝食を終えてクラスごとに集合写真を撮り、何事もなく林間学校を終えた。

 

当時の話はここまで。

 

そしてつい最近、卒業アルバムを見ている時にこの出来事を思い出し、林間学校の写真を眺めていた。

 

それは肝試しの翌朝に撮ったクラスでの集合写真だったけれど、担任教師1人を含め38人が映っていた。

 

1人、多かった…。

 

(終)

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