連鎖する死の呪い 1/5

呪いって信じる?

 

俺は心霊現象とかの類は、

まったく気に留める人間じゃない。

 

だから、呪いなんか

端から信じていない。

 

呪いが存在するなら、俺自身、

この世にはもう居ないはずだから。

 

自分自身で言うのも嫌になるが、

今まで、もの凄い数の人たちを

傷つけてきた。

 

さすがに人を殺すような事は

してこなかったが、

 

何人もの女の人生を、

台無しにしてきた。

 

ヘルス嬢になった奴。

ソープ嬢になった奴。

 

そして、AV嬢に・・・。

 

こんな俺だから、

もし呪いが存在するなら

俺は生きていないはず。

 

そんなくだらない俺にでも、

心から信頼出来る友達がいた。

 

今から1年半ほど前に、

俺は友達に呼び出された。

 

その時はお互い仕事が忙しく、

会うのは約3ヶ月ぶり位だったと思う。

 

呼び出された場所に向かうと、

俺よりも早く友達のAがいた。

 

「おー早いじゃん」

 

俺はそう言ってAに話しかけた。

 

笑いながらAは、

「たまには早く来るさ」

 

そう言い終わると、Aの顔から

笑みが消えていった。

 

いつもなら飲みに行って

話をするのだが、

 

何となくその日は、

そんな雰囲気ではなかった。

 

笑みが消えた後のAの顔が、

それを物語っていた。

 

「どうしても聞いて欲しいことがあるから、

家に来てくれないか」

 

Aの顔に全く余裕が感じられない・・・。

 

「何かあったのか?」

 

俺の問いにAは「家で話すわ」 、

そう言い終わると、

 

足早にその場を離れた。

 

Aの自宅に着き、Aは話し始めた。

 

「兄貴が仕事中に死んだ」

 

そう聞いた俺は、

 

「えっ、兄貴は2年前に死んだんじゃ

なかったの?」

 

思わず聞き返した。

 

「2年前に死んだのは長男。

今回死んだのは次男なんだ」

 

思わず言葉が出てこなかった。

仕事中の事故死らしい。

 

Aの次男が勤めていたのは、

ある大手タイヤ工場だった。

 

その工場で、

主に工作機械のメンテナンスをする

仕事をしていたそうだ。

 

作業後のメンテナンスのために

整備していたところ、

 

大型の工作機械が突然作動し、 

その機械に頭部を挟まれ

Aの次男は亡くなった。

 

即死だったそうだ。

 

それを聞かされて、俺はAに対して

余計に何も言えなくなった。

 

「2年前に上の兄貴が事故で死んだ時も

おかしかったんだ」

 

長男の事故の話だった。

 

Aの長男は、家族3人で移動中、

大型トラックに正面衝突を

起こしていたのだ。

 

「あの時も即死だった。3人ともな」

 

Aの顔は、何かに怒っている

ように見えた。

 

その事故は、

片側2車線の道路で起こった。

 

現場検証では、Aの兄が反対車線に入り

走行した事が原因とされていた。

 

トラックの運転手の話では、

 

避ける間も無いくらいの出来事

だったらしい。

 

Aの言う妙な事とは、

突然車線を変えたのもそうだし、

 

ブレーキペダルとフロアの間に、

猫が入り込んでいた事だそうだ。

 

当然、その猫も生きてはいなかった。

 

「ぶつかる寸前にブレーキを

かけたんだろうけど、間に猫が居て、

効きが悪かったのかもしれない。

 

効いてても、回避する事は

出来なかったんだろうけどさ。

 

猫なんか飼ってなかったのに・・・」

 

それを聞いて俺は、

 

「途中で拾ったのかもしれない」

そうAに言うと、

 

「それは絶対にない。猫嫌いだもん」 

しばらくAは黙っていた。

 

俺は少し気を紛らわしてやろうと思い、

買い物に行きビールなどを調達してきた。

 

買い物から戻りAにビールを渡し、

話の続きを聞いた。

 

「俺これで天涯孤独になっちゃった」

 

Aはそう呟いた。

 

Aの母親は幼稚園の頃に亡くなり、

父親は4年前に亡くなっていた。

 

もう家族で残されたのは、

Aひとりだった。

 

Aの表情は、とても寂しげに映った。

 

その表情が突然変わり、

Aは俺に聞いてきた。

 

「なー、呪いって信じる?」

 

思わず呆気に取られてしまった。

 

「たまにテレビでやってる木とかに

コンコン釘打ったりするやつ?」

 

俺は、あり得ないという表情で

答えてやった。

 

俺のそんな答えに動ずることなく、

Aは喋り始めた。

 

「兄貴2人。そして父親も、

呪いで死んだのかもしれない」

 

そこからその話は始まった。

 

Aは、幼少の頃の話を

聞かせてくれた。

 

そこは普通の田舎町で、

これから話す、『不可思議な事件』

起こりそうな場所では無かったらしい。

 

Aの実家の近くには、

子供心に相手にしたくない

家があったそうだ。

 

ただ単純に、その家のおばさんの

見てくれがもの凄く怖かった、

 

というのが理由だそうだ。

 

野球をしている時に、たまたまボールが

その家の庭先に入ってしまい、

 

仕方なく挨拶をしてボールを

取ろうとした時、

 

そのおばさんに鎌を持って

怒鳴られたそうだ。

 

そんなことなどもあり、

 

その家は子供にとっては、

恐怖の対象でしかなかった。

 

小学2年の頃、

夜中に我慢が出来なくなり

トイレに起きた時の話では、

 

ザク、ザクと物音が聞こえてきて、

トイレの小さな窓から覗くと、

 

そこには庭にある大きな木に向かって、

鎌を何度も突き立てるおばさんの姿があった。

 

とにかくその光景があまりにも怖すぎて、

その晩は寝ることも出来なかったらしい。

 

(続く)連鎖する死の呪い 2/5へ

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