巨大な海洋生物が食っていたもの
「海難事件」というと、何を思い浮かべるだろうか。
おそらく溺死や漂流を思い浮かべることだろう。
だが、そういう類の事件は明るみに出ることはほとんどない。
しかし、公的な記録として残されてはいるのだ。
私はそういう表に出ることのない海難事件の記録を自由に読める立場にいる。
そこで、これまで読み漁った中でも特に印象に残っている事件の話をしよう。
ちなみに、深海にまつわる話である。
巨大生物の体内に・・・
1937年8月、日本海側のほとんど人の訪れることのない砂浜のとある海岸に、謎の巨大な海洋生物がうちあげられているのを地元民が発見した。
すぐに学者が呼ばれ、事態を知って集まってきた大勢の地元民が囲む中、巨大生物の調査が始まった。
全長はおよそ80メートル、体重は不明、深海魚と推定された。
頭部は巨大なフジツボがたくさん張り付いているような非常にグロテスクなものであり、目にあたるもの、口にあたるものは見当たらなかった。
そこから続く胴体の形状は、ウツボのそれとほぼ同様だった。
ただ、所々に透明な皮膚を持っていたという。
調査の間にも野次馬が殺到し、この巨大生物に触れる者なども現れた為、警官が野次馬を整理しようとしたところ一部の野次馬が絶叫し始めた。
何事かと近づき、怯える野次馬の指差す方を見た警官と学者は戦慄した。
透明な皮膚越しから、巨大生物の体内に大勢の人間が詰まっているのが見えたのだ。
「助け出せ」ということになり、急ぎその皮膚を切り裂くと、ドバッと人間が溢れ出てきた。
群集の注視の中、粘液のようなものでドロドロの人間たちが蠢き出した。
なんと、生きていたのだ。
群集が凍りつき動けないでいる中、Tさんはひと月前に漁師の夫が漁に出たまま行方不明になっていた為、「夫がいるのでは?」と、ドロドロになった人間を掻き分け必死で夫を探し、そして見つけ出した。
しかし、声をかけるも「ウー、ウー」と唸るだけであったという。
全員が精神に異常をきたしていたらしい。
彼らは深海で透明な皮膚越しに、一体何を見ていたのだろうか。
(終)
伊藤潤二の短編漫画だよね?
この話はよくぱくられますよぬ?
創作怪談なら朴らずにオリジナルで勝負しろよ。