人の顔をした木目調の机
中学3年に進級した時のことです。
学校の机はよくある木目調のタイプだったのですが、僕の席の机だけがどう見ても、その木目調が『人の顔』だったのです。
それが気味悪くて、誰も見ていない時に隣の席の千村さんの机とこっそり取り替えました。
それ以降、千村さんの様子がおかしくなりました。
放課後に一人で教室に残っては、誰かと喋っている姿が度々目撃されるようになったのです。
僕の母が千村さんのお母さんとたまたま知り合いで、千村さんは家では「彼氏ができた」と嬉しそうに話しているみたいなのです。
そして毎日、彼氏の分も弁当を作って持って行ってるそうです。
学校ではそんな気配は全くないのでおかしいなと思ったのですが、当時の僕は反抗期だったもので、「あっそ」の一言でその話題を片付けてしまいました。
そのうち、千村さんの様子はますますおかしくなっていきました。
なぜか学校から帰ろうとしなくなってきたのです。
まさに登校拒否の逆、帰宅拒否です。
先生や両親が無理やり帰らせようとして発狂し、ついにどこかの病院に強制入院することになってしまいました。
数週間が経ち、それはちょうど梅雨前の時期でした。
気温とじめじめで教室内に異臭が漂い始めました。
臭いがした千村さんの机の中を覗くと、腐った食べ物がぎゅうぎゅうに詰めてありました。
しかし不思議なことに、あの人の顔をした木目調は消えていました。
僕は、きっと“千村さんに付いて行った”のだと思っています。
(終)