間違いなく私はその女性に会っている

墓

 

10年程前に実際にあった話です。

 

友人が出産したので、里帰りついでにお祝いを持って行くことにしました。

 

私の実家は大阪でもかなり北部で、友人は小学校からの同級生です。

 

長く病気をしていてやっと授かった子ですから、これは絶対にお祝いしなきゃと思い、千葉から実家に行きました。

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その道はとっくにないよ?

友人の家に電話をし、何時に行くから~と言って家を出たものの、すっかり辺りの地形は変わっていました。

 

田んぼは潰され、小川は溝になって蓋をされ、池は埋め立てられて。

 

よく遊んだ空き地は駐車場になっていました。

 

でも、友人の家に行く近道の細い山道だけは残っていたのです。

 

その道の途中にはお墓がありましたが、慣れた道なので怖いとも思いませんでした。

 

そこを通ってお墓が近づくと、一人の女性が座っていました。

 

きっと誰かのお墓にお参りをしているんだ・・・と思い、通り過ぎようとしました。

 

すると、その女性に声をかけられ、「マッチを持っていませんか?」と言われたのです。

 

お線香に火をつけるんだろうと思ったのですが、マッチは持っていなかったので100円のライターを差し上げることにしました。

 

が、渡そうとした時に落としてしまい、拾うのに屈むと、その女性は裸足で靴も履いていないことに気付いたのです。

 

一体どうしたんだろう?と思いましたが、プライベートなことだし聞けないけれど、山道は小石も多いので怪我をすると思い、予備に持っていた靴下も一緒に渡しました。

 

お返ししますから・・・と言われましたが、そんなに高いものではないし遠慮せずにどうぞと友人の家に向かいました。

 

久しぶりに会う友人と可愛い赤ちゃん、ご両親も健在で楽しい時間は過ぎてそろそろ帰るという時、先ほどの山道の話をしました。

 

すると、みんなそのまま固まってしまったのです。

 

さらには、友人の弟さんが「その道はとっくにないよ?」などと言い出す始末。

 

まさか~?と言えば、「あの道はとっくに舗装されて今はその辺一体は工場になっているし、関係者以外立ち入り禁止なはず」と。

 

「そんなはずはないよ。さっき通ってきたんだから」

 

「じゃあ見に行く?」

 

送ってもらうついでに見てみると、山道はなくなり、フェンスに区切られて大きな工場が建っていました。

 

そのフェンス沿いに舗装された道路が出来ていて、山道よりも近くなっていたのです。

 

この道は私は知らず、その日もいつも通りに山に入ったはずでした。

 

でも普通なら、通りに入ればフェンスで区切られた従業員駐車場に当たるのです。

 

ならば、私は一体どの道を通ったのか?

 

「あのお墓は?裏でクワガタが捕れるお墓はどうしたの?」

 

「とっくに移動されたよ。かなり昔の話だけど」

 

千葉に引っ越して10年、実家には帰ってもお嫁に行った友人の実家には一度も行かなかったので、工場が出来たなんて知りませんでした。

 

じゃあ、お墓にいたあの人は・・・?

 

実家から千葉に戻って1ヵ月程した頃、母から郵便が届きました。

 

そこにはちゃんと洗ってある靴下と、半分無くなったライターが入ってありました。

 

一緒に入っていた手紙には、『名前は書かれていなくて、ありがとうございましたとだけ書いてあった』と。

 

それが実家のポストに入っていたそうで、姉も妹も知らないと言ったことから私だろうと送ってきたようです。

 

通れるはずのない道に、会えるはずもない女性。

 

だけど、靴下とライターがあるということは、間違いなく私はその女性に会っているのです。

 

何度思い出しても不思議な話です。

 

(終)

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