子供特有の見えない友達
私は小さい頃、積み木やブロックを与えれば何時間でも一人で遊んでいる子でした。
母によると、笑い声や話し声から、私は誰かと一緒に遊んでいる様子だったらしいのです。
母は子供特有の“見えない友達”と思いつつ、「誰と遊んでるの?」と聞いてみたとか。
私は「アキちゃん」と答えたようです。
アキちゃんは何者なのか
アキちゃんは男の子で、小学生くらいの子だと私から聞いたとか。
母は「なんでアキちゃんは○○(私)と遊んでくれるの?」とも私に聞いたらしいです。
それには、「○○が小さくて心配だから、ちゃんと大きくなるように見てるって」と答えたようです。
よく考えると、小学校に入る前まで私はアキちゃんに面倒を見てもらっていた気がします。
幼稚園で遊具から落ちた時に抱きとめてもらって無傷だったり、田舎で迷子になりかけた時には家族の所まで連れて行ってもらったり。
小学校に上がってからは、アキちゃんは現れていなかったと思います。
母がアキちゃんの話をして思い出したくらいです。
時は経ち、そんなこんなで私も社会人に。
昔から方向音痴なので、出張先から帰る時に駅の場所が分からず迷子になったことがありました。
仕方がないので、近くにいた小学生くらいの男の子に道を聞くことに。
男の子は、「・・・あっち。もう大きんだからちゃんとしてよ・・・」と盛大に呆れていました。
私は苦笑いでお礼を言うのが精一杯でしたが、後になって考えると、あの子がアキちゃんだった気がしてなりません。
そこはオフィス街で、子供がいるのは不自然な場所でした。
私には先に亡くなった兄などはいないと聞いているので、アキちゃんは何者なのか謎のままです。
(終)