番号が繋ぐあの世とこの世
これは、10年前の初夏の話。
妹が父に電話しようと発信履歴の画面を表示したところ、登録していない番号が一番上に出てきたそうで。
発信日時はその日の朝6時頃。
「朝に電話した覚えはないし、でも何だか見覚えのある番号なんだよね…」
離れて暮らす姉の私に確認してきたので、試しに私の携帯にその番号を打ち込んでみた。
すると、母の名前と携帯番号が表示されて背筋が寒くなった。
なぜかというと、“私たちの母はその年の春に亡くなっていた”から。
母の携帯電話は亡くなった後に解約していて、妹はアドレス帳からその番号を削除していた。
当然、もういない母に電話するわけがないし、妹に子供はいるけれど当時まだ赤ちゃん。
携帯をイタズラするのも、ましてや登録のない母の番号を偶然発信するとも思えない。
「何か言いたいことがあったのかもね」
とりあえず母の仏壇に、生前好きだったタバコとコーヒーを供えた。
翌日、何もしていないのに妹の携帯電話の発信履歴から母の番号だけが消えていたそうで。
(終)
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