消えた午後ティーと続く幸運

自販機

 

とある事情で神様方にすがる必要ができてしまいまして…。

 

それからは神々を信じて伊勢や出雲、日向で願掛けをしたのに、氏神様に参詣しないのも筋が通らないと思い立ち、家のすぐ近くの歴史ある神社に通うようになりました。

 

死人がよく出て怪奇現象がたまにある病院勤務のくせに、一度も幽霊は見たことがないという霊感ゼロの人間ですが、届くと信じて2週間に一度の参拝を欠かさないようにしております。

 

そんな習慣ができて数年が過ぎ、昨年のお盆の頃の話。

 

午前中で終わる土曜日の勤務を終え、いつも通りに地下鉄に乗って帰っていました。

 

「今日は神社に行く日だ。でも全部回るには硬貨が足りないから、自販機でジュースでも買って崩しておくかな」

 

そんなことを考えていましたが、突然頭の中で、“知らない男の子が私が買ったジュースを欲しがる”という状況が浮かんできました。

 

私はぼーっとする中で、男の子に「いいよ、もともと両替したくて買ったんだし。あげるよ」と答えるという想像をしていました。

 

男の子は凄く喜んでいたような気がします。

 

特にやることもなく過ごしている時は色々と想像したりするので、その時は特におかしいと思うこともなく、いつも通りに電車を降りて、自動販売機でジュースを買おうとしました。

 

お金を入れて目についた午後ティーのボタンを押し、ゴトンと缶が落ちる音とお釣りが出てくる音を聞いて、先にお釣りを回収し、いざ午後ティーを取り出そうとしましたが…ない

 

取り出し口に何もないのです。

 

引っかかっているのか?と思って上の方も探ってみましたが、ありませんでした。

 

周囲には誰もおらず、かなり離れた改札の窓口に駅員さんがいるだけ。

 

先にお釣りを取っていたとはいえ、その時に誰かが取っていったのなら隣に立つはずなので、さすがに気づきます。

 

何より、私は缶が落ちる音を聞いていますし、お釣りも代金を引いた額が返ってきています。

 

もしかして、想像していたようにあげたことになって男の子が取っていった?

 

いやいや、そんなはずは…。

 

お盆だとしても無理がありすぎるでしょう、物理的に消えるなんて。

 

まあどうでもいいか(本当はちょっと喉も渇いたところだけど、ないものはないんだし、お札は崩せたし)と思い直し、お釣りの硬貨を財布に入れ、その硬貨でいつも通りに参拝をして、帰りにいつも通りに食事をしようと行きつけのラーメン屋に寄って帰りました。

 

いつも通りでないのは、午後ティーが消滅したことだけ。

 

必要がないくらい、「水、いる?」とコップの水を継ぎ足してくれるラーメン屋のおじさんのご厚意が、いつもより有難かった夏の1日でした。

 

余談になりますが、その後ちょっとした幸運が続いたのは、午後ティーのお礼だったのかもしれません。

 

(終)

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