その手を引っ張ってみたら
これは、私が小学生くらいの頃の奇妙な体験話。
当時は姉と一緒に2段ベッドを使っていた。
ベッドの上は姉で、私が下。
しかし姉は寝相が悪く、よく手足を柵からはみ出させたりして、下で寝ている私を怖がらせていた。
ふと起きた時に、薄暗い中で上から手や足がぶら下がって見えるのは、ほんとに怖かった。
でもまあ、そんなものにも慣れるわけだけど。
慣れると、ぶら下がっているのを見ても、またか~と思うくらいでまた寝られるようになる。
そんなある日、ふと目が覚めたら頭上から手がぶら下がっていた。
横から手足がぶら下がっていることはよくあったけど、頭の上からってことはなかったので、なんとなく私のイタズラ心が働き、その手を引っ張ってみた。
びっくりして起きろ~と思いながら。
そうしたら、横から「ううん」という声が聞こえてきて、見ると姉が床で寝ている。
寝相が悪すぎて、2段ベッドの上から落ちていた。
アホかよ…と一瞬笑った後、おかしなことに気づく。
「じゃあ、今、引っ張っているこの手は何なの?」
その瞬間、その手が私の手を振りほどくと、私の手首と肘の中間あたりをがっつり握り、上に引っ張ってきた。
私は叫んだ。
叫びながら逆の手で柵にしがみつく。
すると、姉が起きて叫んでいる私に気づき、さらに私を引っ張っている手にも気づき、やっぱり叫んだ。
そして姉はなぜか私を叩きまくり、大騒ぎしているところに起きた親が怒鳴り込んできた時に、手がサッと消えた。
親は手を見なかったそう。
それ以降も2段ベッドは使い続けたけど、その手はもう見ることはなかった。
たまにぶら下がっている手を引っ張ってみても、いつも姉の手だった。
あの手が何だったのか、未だにわからない。
(終)
AIによる概要
この話が伝えたいことは、身近な日常の中に潜む説明のつかない恐怖や不思議な体験です。語り手は姉の寝相が悪くて怖がりながらも慣れ、ある日、頭上からぶら下がってきた手を引っ張ったことで、予想外の出来事が起こります。その後、手の正体が不明なまま、恐怖と謎の感覚が心に残り、日常の中で経験する非現実的な瞬間がどれだけ印象的で忘れられないものとなるかを描いています。