毎日決まった生活をしていた爺ちゃん
俺のじいちゃんは毎日決まった生活をしていた。
朝起きたらコーヒーを豆から入れ、厚切りのハードトーストにバターをたっぷり付けて焼き、ジアジアに温めたウィンナーと一緒に食べる。
お皿を洗い、犬にご飯をやったら散歩に1時間。
帰ってくると風呂を洗い、昼にラーメンか蕎麦を茹でて食べる。
その後、電動自転車で少し遠くのスーパーに晩の魚を買いに行く。
帰ってきたら定位置に座り、犬を膝に乗せて映画、相撲、野球の順にテレビを見る。
風呂に入り、夜ご飯を食べ、巨人が勝てばご機嫌でビールを飲み、負ければ黙って焼酎のホッピー割を飲む。
後は21時までテレビを見て寝る。
毎日毎日おんなじ。
そんなじいちゃんが死んだ。
買い物の途中、自転車に乗ったまま心臓発作であっさりと逝ってしまった。
バタバタとお通夜が始まり、おばあちゃんが一回だけ泣いて、バタバタと葬式が終わった。
沢山の人が来てくれた。
葬式から帰って家族で一息ついた時、台所に『レシートが1枚』置いてあった。
じいちゃんがいつも行くスーパーのレシートだった。
内容は魚の切り身、ラーメン、牛乳など。
もちろん冷蔵庫には魚など入っていないし、なにより日付がお通夜の日だった。
あとがき
犬は2年後に癌で死んだ。
誰にでも噛み付いて、とても不細工な犬だったが、大切な家族だった。
腕枕をするとイビキをかいて、幸せそうに寝る。
ビールの缶を床に置いておくと、追いかけ回して残りを舐める。
そういえば、じいちゃんが死んでお通夜までの家に安置している間、犬が死んだじいちゃんをスンスンしていた。
それで分かったのか、その後は一度もじいちゃんを探さなかった。
(終)