原爆ドームが私に見せた炎の少女
これは、仕事で広島へ行った時の話。
仕事までの空き時間、ホテルから近いこともあって、1日目と2日目に『原爆ドーム』に行った。
子供の時に見た感じとは違い、すごく感動した。
原爆ドームに関しては、“見える人にはかなりの霊が見える場所”というのも聞いており、やはり戦争の悲惨さを痛感した。
しかし、普段から自分が霊的なものを感じない分、「実際に見えたら怖いけど、見えないかなぁ」と、そんなことを考えながら見学していた。
怖い思いをしたのは、こんなバカなことを考えたせいかもしれない。
2日目の夜、出張のおかげで久しぶりに先輩に会えることになり、2人で飲みに行った。
あれこれと会話を楽しんでから、怖がりなくせに怖い話をしていた。
今は一切ないらしいが、その先輩の以前の家はラップ音や心霊写真が撮れるなどが日常茶飯事で、様々な怪奇な経験を持っていた。
話の途中、昨日気になったことがあったので先輩に話そうかと思ったが、そんな先輩なので他の話が怖すぎて知らない間に忘れていた。
相談したかったのは、1日目の夜に見た夢の話。
私は普段から眠りが深いので、夢を見ているのか見ていないのか、起きてから一切夢を覚えていない。
それなのに、なぜかその日はしっかりと夢を見た。
その日の夢は、灰色の空間に女の子が1人で立っていた。
ずっとこちらを何も言わずに見つめていた。
身なりも普通で、特に怖いような感じでもなかったが、あまりにその夢が長かったので気になっていた。
そして2日目の夜のこと。
飲み終わってから先輩に送ってもらい、ホテルへ戻った。
疲れていたので、すぐ横になった。
すると、また夢を見た。
この日の夢はその日に一緒に飲んだ先輩と、居酒屋でずっと楽しく話をしていた。
数時間前と同じ場面が夢に出てきている。
座敷に座る自分と先輩を真横で見ている感じだった。
会話までは覚えていないが、突然、先輩が夢の中の私ではなく横の私を見た。
その瞬間、真っ暗になった。
「ショウコです」
そんな声がした後、また灰色の空間に女の子がいた。
さすがに2度目は怖くなり、しかも喋っていたので「すぐに起きたい!」と思った。
すると、灰色の空間がいきなり業火に変わった。
燃え盛る炎の中、女の子は燃えながら近づいてくる。
怖くて起きようと思っても目が覚めず、体が一切動かない。
女の子は私の目を見ながら、ゆっくりと燃えながら近づいてくる。
服は燃え、体から炎が吹き出している。
目の前までくると、再び「ショウコです」と言い、焼け焦げながらもずっと私の目を見ていた。
すごく悲しそうな顔をして、私を見上げていた。
そして私の手を取った瞬間、女の子は灰になった。
私は起きると汗だくで、なぜか泣いていた。
今でもあの声とあの顔が頭から離れない。
次の日はさすがに原爆ドームへ行くことができなかった。
本当に不思議な夢だった。
ただ、女の子の悲しそうな顔やあの業火は、私が原爆ドームに足を運んだことで招いてしまったと思う。
(終)
AIによる概要
この話は、戦争の悲惨さやその影響を無意識のうちに感じ取ること、そして霊的な存在や過去の悲劇に対する畏怖と敬意を示すことです。夢の中の「ショウコ」という女の子は、原爆の被害者の象徴であり、彼女の存在を通じて、戦争の記憶やそれに伴う罪悪感、自己反省を表現しています。この体験は、戦争の影響が人々の心に深く刻まれていることを強調しています。