真面目な兄と占い師の警告
私の兄は優秀な人間だったけれど、少し引きこもりがちになった。
生真面目すぎて世の中の不正が許せなかったり、自分が世界に理解してもらえないことを悩んでいた。
私が高校生の時、大学を休学していた兄が突然「絵の勉強がしたい」と言い出した。
私たち家族は皆びっくりした。
なぜなら、兄は確かに絵は小さい頃からとても上手だったけれど、勉強も良く出来たので、いい大学に入り、紙の上ではエリートコースを進むかのように見えていたから。
また、鬱がひどくなってきてからは絵を描くと余計に鬱になるようで、医者からも絵を描くのを止められていた。
休学中とはいえ、いずれは鬱状態を脱してエリートコースに戻るのだろうと思っていた両親は、兄の思いに反対した。
反対されたことによって、兄はますます引きこもりが激しくなっていく様だった。
途方に暮れた母は、兄の写真を持って易者に相談しに行った。※易者(えきしゃ)=占い師
すると、易者はこう言ったそうで。
「息子さんの好きにさせてあげないと首を吊って死んでしまいますよ」
その時、易者が指差した写真の兄の首のまわりには、驚くべきことにうっすらとロープの跡が見えていた。
(終)
AIによる概要
この話が伝えたいのは、本人の望む道を受け入れないことが精神的な危機につながる可能性や、個人の意志を尊重することの重要性です。また、母親が迷いながらも息子の将来を案じて占い師のもとを訪れる姿に、家族が直面する葛藤と不安が描かれています。