お腹を空かしたまま逝った子じゃけん
これは、子供の頃の体験話です。
お盆の時期に、妹と2人で祖母の家に泊まりました。
祖父母と一緒にご飯を食べ、妹と客間に寝かせてもらいましたが、夜中に不意に妹がむくっと起き上がり、「お水、飲みたいよー」と言い出しました。
まったくもう……と思いつつ、私は台所からコップに水を入れて持っていきました。
妹は水を一気に飲み干した後、まだ「お水」と言います。
そこでまた台所に行くと、祖母が寝間着姿で台所に立っていました。
私は「妹がすごく水を飲みたがってて」と話しました。
祖母はヤカンに水を入れ、「飲ませておいで」と方言で言いました。
妹は水をごくごく飲み続け、私が不安になった頃、祖母が白いおむすびを2つ持って来ました。
「お食べ」と勧めると、妹は嬉しそうにもくもくと食べました。
そして、妹はため息をつくとそのまま布団に倒れ込み、寝てしまいました。
祖母は私に「今のはばあちゃんの妹で、お腹を空かしたまま病気で逝った子じゃけん」と話し、「もう大丈夫」と私を寝かせました。
翌朝、妹は水もおむすびも覚えていませんでした。
それからも似たようなことが数回ありましたが、祖母が他界してからはなくなりました。
祖母の妹は、お腹がいっぱいになったのでしょうか。
(終)
AIによる概要
この話が伝えたいのは、亡くなった家族の魂が現れることがあり、それを温かく受け入れることで家族の絆や供養の大切さを感じられるということです。祖母が冷静に霊を受け入れ、慰める姿勢は、昔ながらの目に見えない世界への敬意を象徴しています。翌朝には何事もなかったように日常が戻る不思議な余韻が、現実と非現実の境界を曖昧にし、静かに心に訴えかける話となっています。