あの世で会えなかった二人

別荘

 

これは、旅行中に不思議な体験をした話。

 

金曜の夜から日曜にかけて、二泊三日で友人を連れてバイクで出かけた。

 

一泊目は東北のある宿に泊まり、二泊目はうちの親が所有する小さな別荘に宿泊した。

 

この別荘は購入当初、祖母が暮らしており、祖母のために和室も作られていた。

 

そのため、泊まる時はそこを寝室として使っていた。

 

日曜の朝、目を覚ますと、隣で寝ているはずの友人がいない。

 

キッチンの椅子に座っているのを見つけたが、俺が起きたことに気づくと、涙目でこう言われた。

 

「おい、お前! ここ出るんなら出るって言えよ!」

 

寝起きだったこともあり、最初は何のことかわからず、虫の話かと思った。

 

「虫、入らんようにしてたんだけど、出たんか? そこにスプレーがあるから」

 

そう説明を始めたが、友人は「違う、幽霊!」と怒りながら答えた。

 

ちなみに、この別荘は虫、とくに蛾がよく出るので、窓を開けないようにしたり、スプレーを何本も常備している。

 

友人の話によると、夜中に名前を呼ばれたような気がして目を覚ましたが、体が動かなかったという。

 

そして、祖母らしきお婆さんが顔に覆い被さるくらいの近さで「トシアキ…」と名前を呼んでいたそうだ。

 

ただ、この”トシアキ”というのは友人の名前ではないため、友人は必死で「お、俺じゃないです! 俺の名前は〇〇です!」と伝えた。

 

それでも無視され、「トシアキ…トシアキ…」と何度も呼びかけられたらしい。

 

実はこの”トシアキ”という名前は、俺の兄貴の名前だ。

 

兄は10年ほど前、友人と知り合う前に海の事故で亡くなっている。

 

しかも、兄が亡くなった当時、祖母は入院中だったので、祖母には兄の死を伝えないまま、祖母もこの世を去った。

 

もしかすると、今回の出来事は『俺が来た → 俺より少し年上の誰かも来た → それを兄と勘違いした』という流れだったのかもしれない。

 

でも、そうだとしたら、祖母はあの世で兄に会えていないのかもしれない。

 

そう思うと、少し哀しい気持ちになってしまった。

 

(終)

AIによる概要

この話が伝えたいことは、友人と出かけた旅行中に起きた不思議な体験を通じて、語り手が感じた「家族のつながり」や「生と死を超えた絆」のことです。亡くなった祖母が兄の名前を呼び続けたという出来事から、祖母が兄と再会できていないのではないかという悲しみが胸に去来し、それが家族の絆の深さを再認識させるものとなっています。

さらに、幽霊話という形を通じて、普段は目に見えない「記憶」や「想い」が現実に影響を及ぼし、そこに人々の感情が宿ることが、話全体の奥行きを与えています。この体験は、亡くなった人との心のつながりを改めて感じさせるとともに、過去を思い出すきっかけにもなったように思われます。

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