見えない縁と結ばれた不思議な夜

 

これは、自分の『結納の日』に体験した話です。

 

その日の夜、前年に結婚した姉の家に泊まりに行きました。

 

義兄が社員旅行で不在だったので、「久しぶりに姉妹で一晩中遊ぼうよ」と話しながら、烏龍茶を飲み、お菓子をつまみ、ゲームをして過ごしました。

 

姉が下戸なのでアルコールは一切なし。

 

つまり酔っていたわけではありません。

 

深夜を回り、「あんまり騒ぐと近所迷惑だから」とようやく電気を消し、布団に入りました。（姉の住む団地は社宅だったので特に）

 

それでもしばらくはお喋りを続け、徐々に眠りに落ちました。

 

その後、遠くの方から小さな子どもたちが数人駆け寄ってくるような騒々しい気配に気づき、目を開けようとしましたが、開けられません。

 

それなのに、目の前が強烈な光で満たされ、まるでハレーションを起こしたかのように真っ白になったのをはっきりと感じました。

 

金縛りというほどではありませんが、意識だけが起きていて、体は眠っているような状態で動かせません。

 

子どもたちのはしゃぐ声と足音はどんどん近づき、ついには布団の周りをぐるぐる回り始めました。

 

そして掛け布団を引っ張ったり、布団から出ている私の頭や頬をぺたぺた触ったりし始めたのです。

 

「遊ぼう？一緒に遊ぼう？早く！」と、口々に声を上げながら。

 

ですが、隣には姉がいました。

 

彼女はいわゆる”見える”人です。

 

そのため、一人ではないという安心感と、部屋全体を満たしている真っ白い光のおかげで、それほど恐怖は感じませんでした。

 

むしろ、「何かが寄って来ちゃったのかな」と比較的冷静に思いながら、頭の中でこう語りかけました。

 

「ダメ、遊べないよ。私はあなたたちとは一緒にいられない。ごめんね」

 

しばらくすると、掛け布団がひっくり返されたように強く引っ張られました。

 

それに続いて、白い光が徐々に暗くなり、子どもたちの声や足音も遠ざかっていきました。

 

突然、目を開けられるようになり、飛び起きると、掛け布団が裏返っていました。

 

上になっている部分（本来は体に接している面）は暖かく、逆に自分の体に触れている面は冷たかったのです。

 

「ああ、彼らは本当にここに来ていたんだな」と思いながら、姉の布団に目を向けると、案の定、姉も起きていました。

 

「気がついた？今の」と、姉が声をかけてきました。

 

「うん。すごく小さい子たちだったよね。５～６人くらいいた気がする」と私が答えると、姉は「うん、５人」ときっぱり言い切りました。

 

お互いに顔を見つめ合い、「まあ、悪影響はなさそうだし」と納得して、再び布団に潜り込みました。

 

その後、その子たちが現れることはありませんでした。

 

ですが、結婚式の数日前、義母になる方から「お墓参りに行くから車に乗せて」と頼まれ、同行した際に驚くことを聞かされました。

 

義母は、私の結婚相手となる男性の前に５人の子どもを流産していたのです。

 

そして、これから向かうお墓はその５人のお墓だとわかりました。

 

どうやら、結納の晩に現れた子たちは、私にとって義理の”兄姉”にあたる存在だったようです。

 

その後、お寺のそばにあるコンビニで飲むヨーグルトを５人分買い、お供えしました。

 

ですが、あの晩に「遊ばない。一緒にいられないよ」と突き放した私を、彼らは許してくれなかったのかもしれません。

 

結局、私はその後、離婚することになりました。

 

（終）

ＡＩによる概要

この話が伝えたいことは、人と人との縁や、目には見えない存在との関わり、そしてその影響の不思議さです。語り手が結納の日という人生の節目に経験した出来事は、偶然ではなく何か深い意味を持っているように感じられます。義母の過去と繋がりのある「兄姉」たちが現れたことから、家族として迎え入れるにあたっての存在確認や意思表示とも受け取れるものの、語り手がその時「一緒にいられない」と拒否したことが、後の離婚という結果に何らかの影響を与えたのかもしれません。

また、姉の「見える」能力や、一人ではない安心感が恐怖心を和らげた点から、人は孤独ではなく、身近な人々や何か見えない存在に守られ、支えられているというメッセージも込められているように感じます。それでもなお、選択や行動が未来を左右する可能性があるという点で、人間の自由意思や責任も示唆されています。この話は、不思議な体験を通じて、運命や縁について深く考えさせられる内容になっています。