死んだはずの彼がそこにいた

売店

 

これは、母から聞いた話。

 

ほんの1ヶ月ほど前のことです。

 

母は、あまり大きくない総合病院の売店でパートをしています。

 

小さな売店で、店員は午前と午後で1人ずつ交代する体制。

 

母は午後の担当で、閉店までのシフトです。

 

売店は外来受付のロビーに面していますが、外来受付は売店より早く閉まってしまうため、閉店間際には暗い外来受付ロビーの隣で営業する形になります。

 

ある日、外来受付が閉まり、入院患者への面会時間も終わったころ、見た目も服装も若い男性が売店にやってきました。

 

病院自体は閉まっていませんし、売店は1階の出入口に近いため、入院患者でない人が入ってくることも不可能ではありません。

 

しかし、この病院は道が行き止まりになっており、一般の客がふらっと訪れることは珍しいのです。

 

普通に会計をしていると、その男性が母に話しかけてきました。

 

「あれ?藤本さんだよね。久しぶり!俺のこと覚えてる?中学で同じ組だった岩清水だよ」※仮名

 

男性はどう見ても30代前半くらい。

 

しかし、母はアラフィフなので、中学の同級生にはとても思えませんでした。

 

さらに、母の服装は特に目立つものではなく、マスクをしており、名札には結婚後の姓が書いてあるだけ。

 

中学校以来、一度も顔を合わせていないのに、どうしてわかったのか不思議に思いました。

 

岩清水さんという名前には確かに聞き覚えがありました。

 

そう言われてみれば、顔も若いけれど似ているような気がする。

 

ただ、母の記憶では、“その人は高校生の時にバイク事故で亡くなった”と新聞で知ったはずなのです。

 

それを思い出した母は驚き、まともに返事ができませんでした。

 

しかし、男性はその様子を見て、さらに話しかけてきました。

 

「え?昭和▲▲年生まれだよね?」

 

確かに、母の生まれ年と一致しています。

 

男性は最後に「頑張ってね」と声をかけ、そのまま去っていきました。

 

もしかすると、亡くなったというのは母の記憶違いかもしれない。

 

そう思った母は後日、自分の母(私の祖母)に岩清水さんのことを尋ねました。

 

「岩清水くんって覚えてる?」

 

「ああ、あんたが高校の時に亡くなった子でしょ?バイク事故だったっけ」

 

やはり、祖母の記憶でも岩清水さんは亡くなっていたのです。

 

岩清水という名字は珍しく、母の知り合いの中にもその人しかいません。

 

オカルト系をまったく信じていない母ですが、この出来事だけは冗談では済まされない、不思議な体験だったようです。

 

(終)

AIによる概要

この話が伝えたいことは、日常の中に突如として現れる「理屈では説明できない出来事」の不気味さと、その影響です。母にとって、売店での仕事はいつも通りの何気ない日常でした。しかし、そこに現れたのは、本来ならば会うはずのない人物、亡くなったはずの同級生でした。

この出来事は、母の記憶や現実の認識に揺さぶりをかけ、さらに祖母の証言によって「勘違いでは済まされない何かが起こった」と確信せざるを得ないものとなります。特に、母がオカルトを信じていないにもかかわらず、その出来事を否定できなかった点が、話の不気味さを際立たせています。

この話は、私たちが「常識」として信じている世界の裏には、まだ解明されていない不可思議な領域があるかもしれない、という示唆を含んでいます。

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