祖母が夢で告げた三度の死線

3つの光を指差す祖母と娘

 

祖母が亡くなった日のことを、私は今もはっきりと覚えている。

 

その少し前、私は“不思議な夢”を見た。

 

夢の中で祖母は実家の部屋にいて、「布団を上げてくれ」と頼んできた。

 

私は昔のように布団を畳んで押し入れにしまった。

 

すると祖母は私の手を取って、「ありがとねぇ」と微笑んだ。

 

思い返せば、数年前に祖母にはベッドを買ってあげていたし、私自身も上京していたから、祖母の布団を畳むことなんて長らくしていなかった。

 

それなのに夢の中では、幼い頃の日常がそのまま蘇っていた。

 

目を覚ますと、私は涙を流していた。

 

そして直後、父から電話があり、祖母が自宅で息を引き取ったことを知らされた。

 

葬儀が終わり、アルバムを親族と眺めていたとき、不意にあの時の“夢の続き”を思い出した。

 

祖母は私の手を強く握りしめ、泣きながらこう告げていたのだ。

 

「いいかい、お前が生きていく中で、死んでしまうほど辛いことが三度ある。でも死んではだめだよ。三度だけは我慢して生きなさい。何とかしてあげたいけれど、三度は自分で乗り越えなさいね」

 

その言葉に、私は胸がいっぱいになり、夢の中で一緒に泣いていた。

 

どんなことがあっても生きていこう、と心に誓った。

 

それから数か月後。

 

私は自転車で走っていたとき、後ろから車に追突された。

 

猛スピードで押し出され、肩口から電柱にぶつかった。

 

瞬間、祖母の言葉が頭をよぎった。

 

あれは比喩ではなく、本当に”死にかけること”だったのだ。

 

救急車を呼んでくれた通行人からも「気をしっかり持て!」と言われ、祖母の声と重なるように聞こえた。

 

幸い後遺症もなく回復し、保険のおかげで生活にも困らなかった。

 

ただ一つ、心の傷になっているのは、祖母の言葉の残りである。

 

私には「あと二度」、死にそうなことが訪れるのだろうか。

 

その不安は今も消えないままだ。

 

(終)

AIによる概要

この話が伝えたいことは、ただ「祖母の予言が当たった」という怖さだけではなく、死者の思いが生者に届き、それが現実と重なり合う不気味さにあります。

祖母の夢は単なる別れの挨拶ではなく、これから自分に起こる試練を暗示するものであり、その言葉が実際の事故と結びついたことで、出来事は「偶然」では片づけられない強い説得力を帯びています。そして残り二度あると告げられた「死にかける出来事」を前に、語り手は生き延びた安堵と同時に、逃れられない運命への恐怖を抱き続けることになります。

つまりこの話は、人の死をきっかけに見えない境界を垣間見てしまった者が、その予兆を信じざるを得ず、生きること自体に不安を背負い込むようになる。そんな、人なら誰でも共感しうる「死と生の境界の怖さ」を伝えているのです。

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