消えた幽霊が赤いランドセルで迎えに来た

8年くらい前、心霊スポットで肝試しをした帰りに、ひとつだけ”余計なもの”を連れて帰ってしまった。
そのときは、たしかに追い払ったはずだった。
なのに先週、旅先で俺の名前を呼んだのは、赤いランドセルを背負った、あの女だった。
そのとき、金縛りに遭った。
動けないままでいると、顔が潰れた女性っぽい幽霊に睨まれた。
首から上は本当にぐちゃぐちゃで、見ているだけで吐き気がするほどだった。
気づいたときには、無我夢中でその場から逃げ帰っていた。
でも、それから数日間、その幽霊が目の前に現れるようになった。
どうやら連れて帰ってしまったらしい。
あまりの怖さに震えながらも、気負うとダメだと思って、「近寄るな」「何で俺なんだ」「出て行け」と叫んでいたら、耳元で「なぜ?私はこんなに好きなのに?」と囁かれた。
「好かれる理由がないだろ! 気持ち悪い!」と叫ぶと、その幽霊は急に顔がきれいになり、生前の顔なのか、美しい顔立ちになって、「これでどう?」と言った。
……確かに美人だけど、そういう問題じゃないだろ!!
「俺は生きてるんだ。君は死んでるんだろ?だから無理なんだ、消えろ!」と言うと、「そう……」とつぶやいて消えていった。
それから1週間が過ぎても、もう出てこない。
正直、あれで本当に追い払えたんだと思っていた。
それから月日が流れ、先週、旅行に行った。
もちろん、あんな出来事はすっかり忘れていたのだが、一瞬で思い出すことになった。
旅先のベンチでゆっくりしていると、「〇〇君っ!」と名前を呼ばれた。
一人旅の途中だし、知り合いがいるわけもない。
同じ名前の人でもいるのかと思っていた。
すると、また、「〇〇君っ!」と声が聞こえた。
次の瞬間、「〇〇君だよね?」という声とともに肩を叩かれた。
ビクッとなりつつも、「はぁ?」と言いながら振り返ると、赤いランドセルを背負った見知らぬ小学生くらいの女の子が立っていた。
俺「そうだけど、何で俺の名前知ってるの?」
女の子「やっと見つけた」
俺「ん?俺、財布か何か落としてた?」
女の子「忘れたの?私よ」
あれ?
この顔つき……このしゃべり方……どこかで……?
!?
俺「ああああああ!!!!!!」
そう、あのときの幽霊だった。
俺「またお前か!消えろ!」
女の子「なぜ?」
俺「前にも言っただろ!俺は生きてる、君は死んで……」
女の子「私は生きてるわよ、ほら」
そう言いながら、手を胸に引っ張られた。
温かい。
心臓も動いてる。
俺「うわっ!え、な、なに?は?」
女の子「あなたが死んでるって言うから、生まれてきたの。そしてやっと見つけた。でも、今日はもう帰るね。お母さんが呼んでるから」
腰が抜けて、30分くらい動けなかったと思う。
それから旅館もキャンセルして、急いで地元に戻ってきたけど、なにあれ……。
何で俺……。
何かしたのか……。
(終)
AIによる概要
この話は、「終わったと思ったことは、本当は終わっていないかもしれない」という怖さを伝えている話です。
語り手は最初、幽霊に「君は死んでるから無理だ」と言って追い払います。そのときは解決したつもりで安心して、時間が経つうちにその出来事を忘れてしまいます。
でも実際は終わっていませんでした。幽霊はその言葉を受けて、“生きている存在”として語り手の前に戻ってきた。しかも小学生の女の子という、普通なら一番怖くないはずの姿で現れたことで、逆に不気味さが増しています。
つまりこの話の怖さは、幽霊が出ることそのものよりも、自分がその場しのぎで言った言葉が、あとになって思いもしない形で返ってくることです。語り手は自分を守るために言っただけなのに、その言葉が怪異に新しい形を与えてしまったかもしれない。そこがゾッとするところです。
もうひとつ大きいのは、軽い気持ちで行った肝試しが、長い時間をかけて現実にまで影響してくる怖さです。ただ遊び半分で心霊スポットに行っただけのはずなのに、その行動が何年も経ってからまた自分に返ってくる。だから最後の「何で俺……何かしたのか……」という言葉には、語り手の“自分の軽い行動が原因だったのでは”という後悔や恐れが込められています。
要するにこの話は、「軽い気持ちで関わったものは、忘れた頃にもっと怖い形で返ってくる」ということを、とても不気味に描いた怪談です。

































