怖い夢をノートに記録したその日・・・

ノート

 

あなたは『夢日記』というものを知っていますか?

 

夢日記とは、夢の内容を記録する日記。

 

なぜか彼女から会う度に勧められていた。

 

オカルトやスピリチュアルには全然興味の無い子だったのに。

 

ちょうど江原さんとかが人気の時だったから、それに影響されたのかも知れない。

 

あまりに言ってくるから、1週間だけやることにした。

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その日、朝から妙な感じがしていた

でも夢って、毎日見ているのかも知れないけれど、夢を見たことすら忘れていることがほとんど。

 

枕元にノートとボールペンを置いて、6日目にやっと夢を記録することが出来た。

 

めちゃくちゃ怖い夢だった。

 

だから覚えていたんだと思う。

 

寝ぼけ眼でノートにサッと書き、出勤の準備をした。

 

その日は出勤時から何か妙な感じがした。

 

でも何が妙なのかは分からない。

 

外回りで駅に行く途中、先輩が他社を回らなければいけなくなった。

 

そこで妙な感じの正体が分かった。

 

デジャヴだ。

 

※デジャヴ

既視感(きしかん)は、実際は一度も体験したことがないのに、すでにどこかで体験したことのように感じることである。(wikipediaより)

 

出勤時なんて毎日同じだし、先輩が急に他社を回ることも何度かあった。

 

でも何か違う。

 

そういう事ではなくて、全く同じ事が前にあったような気がする。

 

駅の改札で中学の同級生Sに会った。

 

これもデジャヴだ。

 

Sとは同じ遊びグループだったが、中学卒業後は数える程しか会っていない。

 

たぶん高校の時以来の再会だと思う。

 

お互い多少の時間があったので、マクドナルドで少し話すことになった。

 

話している最中もデジャブのことが気になっていた。

 

(いつのことかな?あれ?もしかして夢か?今朝の夢?そうかも知れない・・・)

 

夢日記には記録したが、寝ぼけ眼で走り書きした程度。

 

怖い夢だったのは覚えているが、夢の内容はもう忘れている。

 

だからこのデジャヴが今朝の夢かどうかは分からないが、そんな気がしてならない。

 

もし今朝の夢だったとしたら、このままいくと怖い事が起こる。

 

Sとの会話も上の空で、考えにふけっていた。

 

「そろそろ出ようか?」

 

そう言うSの言葉で我に帰り、店を出た。

 

Sとは行く方面が同じだったので一緒にホームに行こうとしたが、どうしてもデジャヴが、今朝の夢が気になった。

 

(このまま行くと怖い事が起こる。引き返すか?でもそれこそが今朝の夢の通りだったら引き返すことで怖い事が起こるな。どうしよう・・・)

 

俺は引き返すことにした。

 

「ちょっと社に忘れ物をした」とSに告げて別れ、得意先には自腹でタクシーで行った。

 

それからデジャヴはなくなった。

 

ああ良かったと思うのと同時に、バカな事をしたかなとも思った。

 

デジャヴが怖くて自腹でタクシー。

 

実にバカらしい。

 

得意先からの帰りはさすがに電車で帰ったが、どうやら事故があったらしくダイヤが乱れていた。

 

まさかとは思ったが、駅に着いてから駅員に聞いてみると、飛び込みがあったという。

 

(Sか?怖い事ってこの事だったのか?)

 

すぐにでも事の真相が知りたくて、携帯に入っている中学の時の同級生全員にメールでSについて聞いてみた。

 

しばらくしてから、「今日Sが電車に飛び込んで死んだ」というメールがきた。

 

多分あの後、すぐSは電車に飛び込んだのだろう。

 

やはり怖い事とはこの事だった。

 

かなり罪悪感があった。

 

もしかしたら止められたかも知れないのに。

 

暗い気持ちで家に帰り、彼女に電話で今日あったことを話し、慰めてもらった。

 

寝る時になって、そういえばデジャヴの正体が今朝の夢かどうかまだ分からないことを思い出し、枕元のノートを見てみた。

 

ノートには走り書きでこう書いてあった。

 

「駅でSと会い、自殺の道連れにされる」

 

(終)

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