肝試し後、髪の長い女が付いてきた
これは、友人の須藤と『髪の長い女』の話。※名前は仮名
もう15年くらい前の高1だった頃から現在も続いているようだ。
事の起こりは、須藤が廃アパートへ肝試しに行ってからだったと思う。
その時は昼間だったが入口からは入れないということで、ベランダ伝いに2階や3階へ手すりを越えながら各部屋に移動していたらしい。
すると、とあるベランダの物干しざおに長い髪の毛が束で引っかかっていた。
須藤は気付かずにそれを掴んでしまい、手に髪の毛が絡み付いてパニックになった。
さすがに怖くなってその日は帰ったそうだが、それ以来、須藤に髪の長い女が付いてきてしまった。
あのおねえちゃんだれ?
須藤は当時、仏間のある古い家に住んでいて、霊道というのだろうか、ただでさえ変なものが色々と出る場所だったのに、髪の長い女がヒエラルキーの頂点に君臨した。
※ヒエラルキー
階層制や階級制のことであり、主にピラミッド型の段階的組織構造のことを指す。(Wikipediaより)
髪の長い女が仏間のある部屋にたまに現れるようになったそうだ。
それから数年に渡り、須藤は長い髪の毛に悩まされることになった。
例えば、バイト中にトイレ掃除をしようと便器を見ると髪の毛がいっぱい詰まっていたり、外をホースで流そうと水を出したらドロっと髪の毛が一緒に流れてきたり。
他にも、ちりとりでゴミを取ってふと見ると、その中に髪の毛が大量に入っていたことも。
私自身が実際に須藤から聞かせてもらったのは、携帯電話の留守録だ。
須藤曰く、いつの間にか入っていた留守録だそうで、しばらく風の音のような「ゴォーーー」という雑音が流れ、最後に女の声で「あ、髪の毛が」でブツっと途切れる。
女は早口で細い声で、しかも雑音の中だから非常に聞き取りづらかったが、たしかにそう録音されていたと記憶している。
須藤に「怖くないの?」と聞いたこともあったが、幽霊はかなりの美人だそうなのでOKだとか。
実際、他の友人が家に泊まりに来てからは、しばらく友人の方へ付いて行ってしまって、その時は残念そうに「居なくなっちゃった・・・」と言っていたので私は神経を疑ったこともある。
その美人幽霊、すぐまた戻って来たそうだが。
その後、7~8年ほど前に生き仏のような祖母が他界して以降、家の守り神がいなくなったせいか霊障が激しくなり、家族にも不幸なことが相次いた。
他の霊が活性化したせいか、髪の長い女も現れなくなった。
そして須藤が結婚して家を建てた期に、その実家は引き払うことになったそうだ。
以降、新居では幽霊が現れることもなくなったらしいが、先日久々に須藤に会ったらこんなことを言っていた。
5歳になる長女の娘が時々部屋の中で「あのおねえちゃんだれ?」と妻に質問することがあった、と。
妻からその話を聞いた須藤は、娘に「どんなお姉ちゃんなの?」と尋ねると、「かみのけのながいおねえちゃん」と答えたという。
須藤曰く、「まだ居るかもしれんなぁ。ハッハッハ~」だそう。
(終)