気丈な母が見せた涙

3年前、父が膀胱癌だと判明した。

 

夏場だった。

 

働き盛りで元気な姿しか

見たことのなかった父が、

 

ゲッソリ痩せて体に管を通してる姿は、

家族としてもう見てられなかった。

 

でも、父の前で、

泣くことも出来やしないし。

 

私と母と弟は、毎日交代、

または一緒に病院に通いつめた。

 

特に母は気丈だった。

 

心労で痩せちゃった弟や、

作り笑顔ながらも

どこか憔悴しちゃってた私。

 

それに比べ、

ハイ!泣いてらんないよっ、

 

あんたこれ病院持ってって、

アレ洗っといてと。

 

テキパキ指示を下す。

 

父の前でも、

「膀胱癌て絶対死なないんだってよ?」

などと(オイオイ)

 

冗談なのか何なのか分からないような

こと言って、笑ってた。

 

母流の励ましだったようです。

 

でも、母もやっぱり心の中では

泣いてたんだよね。

 

代々商店やってた我が家に、

地方の農家から嫁いだ母は

右も左も分からず、

 

ただがむしゃらに、父と力を合わせて

これまでやってきた。

 

父だけが支えだった。

 

だからなのか、父が(計2度手術した)

最初の手術する直前、

 

母の隠してた感情が、

一気に出てしまった。

 

明日手術、という緊張で、

その日病院から帰る母と私と弟は

ピリピリしていた。

 

私と弟なんて、つまらないことで喧嘩して、

ムッとして駅への道を歩いていた。

 

ホームに立ってても、

 

「ちょっとね、あんたさっきの言葉

取り消しなさいよ」

 

「姉ちゃんこそ何だよ、バカッ」

 

なんてね、

いい年して言い合いっこしてたんです。

 

その時でした。

 

母が、ホームの向こうを見て棒立ち。

 

私と弟は言い争うのを止め、

「お母さん?どうしたの?」

と聞きながらも、

 

その視線の矛先を追っかけて見て・・・、

私も弟もピタッと声を失いました。

 

80代ぐらいのおばあさんが、

ホームのずーーーっと向こうに

涼しげな恰好で立ってたんです。

 

こちらを向きません。

 

が、そのちらりと見える横顔が・・・

どう見ても他界した母の母、

 

つまり、おばあちゃんでした。

 

弟などあんまりにびっくりして、

「お・・、おば・・、おばあ・・・」

と、どもっていた。

 

同時に電車がホームに入ってきて、

おばあさんは消えました。

 

母も泣いていました。

 

母が後で言ってました。

 

笑顔でいたけど本当は毎晩、

父のことを考えると、

 

布団に入って電気を消してから

気が狂いそうだったと。

 

誰でもいいからすがって泣きたい気持ち。

 

子供時代に母親の胸で泣いた時を、

思い出していたそうです。

 

だから、心配したおばあちゃんが、

 

「しっかりしなさい。神様は見捨ててないし、

あんたが今、気張んなきゃダメでしょ」

 

って姿だけ、

見せてくれたんじゃないかって。

 

・・・父?

 

お陰様で2度目の手術が成功し、

今も元気です。

 

(終)

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