アキクサインコのちび子のお話
私はペットショップで働いています。
担当はインコ類。
もう数百とヒナを育てていますが、当然ながら中には体の弱い子や、何か病気を持って入ってくる子もままあるわけで。
残念ながら入荷の安い小鳥類は病院に連れて行ってあげられなく、出来る限りのことはしていますが・・・お空に旅立ってしまう子も。
アキクサインコのちび子も、そんな子でした。
私はいくね!ありがとね!
かわいいローズカラーのちっちゃい子でした。
羽も産毛の状態で。
だけど、見た目は元気でチキチキチキチキと鳴いて、一生懸命にエサをねだって。
でも、育たない子でした。
一週間、二週間しても羽すら満足に整わない。
ガラスケースの特別室でこまめに温度やエサを管理しても、ただひたすらちっちゃいまんまで、私を見るとチキチキチキチキと鳴いて、ごはん頂戴ごはん頂戴。
ダメだ・・・この子は育たない子だと分かっても、何とか生きて欲しくてあれこれ工夫をしましたが、ある日とうとう・・・ガラスケースの中で瀕死の状態になっていました。
一か月くらい育てたのかな。
それでも頑張ったよねって手に包んで、ピクピクしていたけれど次第に静かになっていくちび子に涙が流れました。
その夜でした。
死んだ小鳥はみんなきっと、粟穂(あわぼ)のたくさん生えている楽しい森に行って、楽しく暮らす。
ちび子もきっと本当のお母ちゃんに会えてるといいな、と思いながら就寝しました。
何時だったか分かりません。
耳元に突然、「チキチキチキチキ」というあの鳴き声がしました。
真っ暗な中、右肩に小さな重みがして、ちょんちょんと突いたり歩いたり。
そして、やっぱりチキチキチキチキと鳴きながら、それはフッと軽くなり、少し粉っぽいあの小鳥の独特の匂いがして、その後は何も聞こえなくなり・・・。
挨拶に来てくれたの?
それとも慰めに?
「私はいくね!ありがとね!」と言ってくれたのかな?
その感覚があまりにもリアルなものだったので、今でもよく覚えています。
(終)
これは泣く