幻か現実か?岡田家に起こった怪異
これは、友人の岡田から聞いた話。※仮名
岡田は少年の頃から読書が大好きだった。
いつも何かの本に夢中になっては、誰かに止められるまで読みふけっていた。
彼の家は築十数年の木造2階建て。
岡田は2階にある一室を勉強部屋として与えられていた。
そんな、ある休日の午後のこと。
いつものように自分の部屋で冒険小説に夢中になっていた。
そして、読み始めてから数時間が経った頃だった。
「はーい。なあーにー?」
母親に自分の名前を呼ばれた気がして、大声でそれに応えた。
部屋の扉を開ければすぐに階段があり、そこを降りれば1階である。
食事や用事がある時は、いつも母親が階下から呼びつける。
しかし、返事はなかった。
あれ?聞き違いだったかな?と思ったその時、襖がスーっと小さく開いた。
…?
寝転がったまま襖の隙間から向こうを見ると、母親が『おいでおいで』と手招きしている。
…何なの?
そう思って身を起こし、襖に手をかけようとした瞬間、襖が消え、母親が消え、視界いっぱに地面が飛び込んできた。
「うわああ!?」
岡田が向かったのは襖ではなく、まったく逆方向にある窓だった。
なんとか体のバランスを保って落下を免れたが、もし落下防止用に取り付けられた柵が少しでも低ければ…と、思い返すたびにゾッとするという。
はたして、彼が見たのは幻だったのだろうか?
それから2時間ほどして、母親が帰宅した。
家の中で一人して恐怖に打ち震えていた岡田は、母親に縋りつき、泣きながら事のあらましを説明した。
すると、母親は神妙な顔をしてから意外な話を息子に聞かせた。
「お母さんも最近おかしなことばかり起こるのよ。2日前のことなんだけどね、お買い物から帰ってきたら家中の窓が全部開け放れていたのよ。
もちろん家には誰もいないし、出かける前に戸締りはちゃんと確認したはずなのに…。あれは何だったのかしらね」
結局、岡田とその母親が体験した出来事は、未だに何もわからないままなんだとか。
(終)