見えなかった私と見えていた彼

トイレ

 

私には、とても後悔していることがあります。

 

その後悔は、日に日に強くなっています。

 

3年前、主人が亡くなりました。

 

主人は節約が好きで、堅実で真面目な人でした。

 

無駄な電気を使わないよう、こまめに節電を心がけ、「もったいない」という言葉がいつも口癖でした。

 

温水便座も、フタを閉めることで節電になるという主人の提案で、毎回フタを閉めることにしていました。

 

ところが、ある時に突然「トイレのフタは閉めるな」と、ものすごい剣幕で主張し始めたのです。

 

最初はその意味がよくわかりませんでしたし、事の深刻さにも気づいてあげられませんでした。

 

癖になっていたので、使用後は何度もフタを閉めてしまっていました。

 

その後、主人は「トイレに何かがいる」と怯え始めました。

 

フタを開けると、水が溜まっているはずの空間に真っ暗な穴がぽっかりと開いていて、そこに吸い込まれそうになる、と言うのです。

 

その主張を、私は冗談だと思っていました。

 

あまり真剣に耳を傾けていませんでした。

 

あの時、もっときちんと話を聞いてあげていれば、そして主人の言うことを信じてあげていれば、と今でも苦しくなることがあります。

 

ある土曜日の昼過ぎ、外出から帰宅した私は、トイレの前で主人が心臓発作を起こして倒れているのを見つけました。

 

「トイレに何かがいる」と怯えていたのに、その日も私は誤ってフタを閉めてしまっていました

 

結局、因果関係は掴めませんでした。

 

私は何も気配を感じませんが、もしかしたら何かが見える人には見えるのかもしれません。

 

(終)

AIによる概要

この話は、主人の恐怖や不安を軽視してしまったことへの深い後悔を表現しています。主人が感じていた恐怖や異常をもっと真剣に受け止めていれば、違った結果があったかもしれないという思いが強調されています。また、パートナーの感情や訴えを信じることの重要性や、心理的な兆しにもっと敏感であるべきだという教訓が込められています。主人の死因が明確に解明できなかったことも、心の中での消化不良を生み、後悔を深める要因となっています。全体を通じて、信じることや理解することの大切さを教えていると言えます。

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