毎日通っていた橋で馬を見るようになった
これは、俺が小学生の時に体験した話。
学校の帰り道には古い橋があって、そこを毎日通っていた。
ある時、その近くで『馬』を見た。
ただ、牛はともかく馬は珍しいな、と思っただけだった。
馬の正体
次の日から馬は数が増え、距離も近くなり、一緒に橋を渡って帰る感じになった。
ある日、馬がいないから何となく橋の下の川を覗き込んでみた。
すると、身体が折れたような歪な馬が沢山いて、こっちを見つめていた。
それまで正体も分からない馬を何故怖く思わなかったのか、急に寒気がして家に向かって走った。
途中の畑にじいちゃんがいたので、息を落ち着けながら馬の話をした。
すると、「ここで待ってろ」と言って一人で家に戻ったじいちゃんは、竹と紙垂とお米の紙包みを持って来た。
そして一緒に橋の袂(たもと)の石碑に行き、お供えをした。
帰り道、じいちゃんから石碑は『馬頭様』だと教えられた。
※馬頭観音(ばとうかんのん)
仏教における信仰対象である菩薩の一尊。観音菩薩の変化身(へんげしん)の1つであり、いわゆる「六観音」の一尊にも数えられている。(Wikipediaより)
昔、橋の両脇は急な坂で、坂を登り切れず力尽きた馬が馬車に引っ張られて川に落ちて死んだらしい。
あまりに被害が多かった為、石碑を建てて供養したとのこと。
動物の悪い念はすぐ人に伝わるから、俺が最初に会った馬達は「悪いものではない」とも言われた。
家に着くと、玄関で頭から酒をかけられて、背中に塩を振ってから入った。
それからは馬を見ていないが、お供え物は毎年欠かしていない。
(終)