万華鏡の向こう側に映ったもの
これは、祖母が老人会で作ってきた『万華鏡』にまつわる話。
さっそく祖母の万華鏡を覗いてみると、中に閉じ込めているホログラムが多すぎて綺麗に見えなかった。
なので祖母が寝てしまってから、私と母と妹だけでこっそり中身を減らしてみた。
すると、祖母手作りの万華鏡はちゃんと万華鏡らしく綺麗な模様を映すようになり、三人で順番に覗きあった。
しばらくして母と妹は先に寝てしまったけれど、私はその後も一人で覗いては上を向いたり揺すったりして万華鏡で遊んでいた。
そうしているうちにふと思いついて、覗き口と反対側に手をあてて光を塞いで覗いてみた。
すると、万華鏡の向こう側に映った『自分の目』が見えた。
つやつやした黒目が万華鏡の中で何倍にも増えて、黒いお花のようだった。
面白いなぁと思ったけれど、覗いているうちになんとなく怖くなり、母と妹を起こして二人にもやるように勧めた。
ところが、二人は「何も見えない」と言う。
まさかと思いながら自分でもう一度覗いて色々と動かしてみたけれど、今度は何も見えなかった。
後になってよく考えてみれば、万華鏡の構造的に自分の目が見えるわけないよなぁ・・・とほんのり怖かった。
(終)