ビルの階段に張られた「進入禁止」の先で
これは、友人の恐怖体験談です。
現在20代半ばの彼が、小学6年生の時でした。
○袋にある××学院という中学受験の塾に通っていた彼は、夏季講習が休みの日も友人たちと自習室で勉強していたそうです。
そのうち休憩を取ろうということになり、コンビニで買い物をした後、彼らは塾の入っているビルをうろつくことにしました。
あれほど行くなと・・・
そのビルは何階建てだったかは忘れたそうなのですが、1階から4階までが塾で、それより上にはテナントが一切入っていなかったそうです。
そして塾の生徒は、このビルの5階以上に行ってはいけない、とキツク言われていたとのことです。
その日はビルの警備員と塾の講師の数名しかいなかったということもあり、彼らは階段に張られた『進入禁止』の鎖を乗り越えて上へ向かいました。
曰く、屋上にでも行ってお菓子を食べるつもりだった、ということです。
ところが何階か上がった頃に、友人は上の階から来た警備員にぶつかり、見つかってしまったのです。
「こら!お前たち何やってるんだ!」
友人は咄嗟に身をひるがえし、上がってきた階段を下り始めました。
体がぶつかった時に警備員の名札が見え、『岡田(仮名)』と書いてあったそうです。
子供は素早いもので、友人とその仲間たちは急いで階段を下りて行きました。
また、捕まらないよう長い渡り廊下を渡って反対側の階段から逃げました。
しばらくして、友人はおかしなことに気がつきました。
階段をいくら下りても、塾が入っている階まで辿りつかないのです。
変だなと思った友人は、階段の踊り場に『7階』と書かれているのを見るや、警備員のおじさんが追いかけて来る声を聞いて慌て出しました。
友人はさらに階を次々に下りて行きました。
しかし、どれだけ下りても表示は『7階』のまま。
彼らは半ばパニックになり、泣き出す者もいたということです。
するとその時、下の階から塾の講師が現れ、捕まってしまいました。
「お前たち、上の階に行ったんだな?あれほど行くなと言っているのに!」
友人は警備員の人に怒られて追いかけられました、と言ったそうです。
その後に起きた不思議なことも。
すると、講師が言いました。
「昔な、上のテナントの警備員がうちの塾の子供と遊んでいて、階段から誤って落ちて亡くなられてしまったんだよ。
それからは上の階で不思議なことが起きるというので、気味悪がられてテナントが入らないんだ。
そうだ、お前ら、警備員さんの名札を見なかったか?
先生が後で謝っておくよ」
そして友人は言いました。
岡田さんという人です、と。
すると講師は青ざめ、こう言ったそうです。
「その亡くなった警備員というのが岡田さんというんだ」と。
(終)