拝み屋家系の神社からの神降ろし
うちの母方の家系は、いわゆる『拝み屋』。
元は神社だったのだが、人に譲ってからは拝み屋をやっていた。
だが、拝み屋といっても儲からない。
お金を取ってはいけないから、兼業の拝み屋だ。
それでも、ひいじいちゃん、ばあちゃん、そして叔父さんと拝み屋を続けている。
神子の存在
母は三兄弟の真ん中で、三人の中ではあまり力がなかったらしい。
ほとんど見えないし、祓うことも出来ない。
一番その力が強かったのが長女の伯母さん。
いるだけで全てのモノを食べてしまう、らしい。
しかし、跡取りを決める時に伯母さんが「私は長く持たないからね」と辞退し、叔父さんが継いだ。
その伯母さんも上京して結婚し、子供を産んだ。
一人目の出産の時は何ともなかったが、二人目を産んでからは力がさっぱり無くなった。
というのも、伯母さん曰く、二人目の子が家系の中で一番力が強くなった。
なんでも伯母さんの力が強かったのは、二人目が生まれるまでに死なれたら困るからのようで、産んだ今は用無しらしく、全く力が無くなったそうな。
そして、この二人目が不思議な子だった。
障害があって年より精神が幼く、かろうじて意思疎通は出来るという感じ。
そんな子だが、例えば山の中を歩いていると、木や草が避けるのだ。
本当にその子の前だけに道が出来る。
後ろを歩いてると、その反動で木の枝がこちらの顔に当たるぐらいに。
それに鳥や獣も、野生だろうがペットだろうが関係なく懐く。
野生の雀が人間の肩に止まるなんて初めて見た。
一番驚いたのが、「お腹空いたね」とその子に言うと、「じゃあ、お願いするね」と柿の木に頼んでいた。
そうしたら柿の実が二個、ぽとんぽとんと落ちて来たこと。
風もなく、揺れてもなく、動物もいなかった。
怖い思いどころか助けてもらうことが多いので、怖くはないが凄く不思議だ。
もしかすると、その子は『神子』というものだろうか。
神社を人に譲る時に家系に神様を降ろしたので、今はその子に憑いているのかもしれない。
(終)