この世とおさらばしようかと考えていた頃
これは、電車に乗っている時にあった奇妙な体験話。
その頃の私は精神的に参っていて、この世とおさらばしようかと考えていた。
そんなある日のこと、通勤の電車内で頭痛と腹痛のため汗をダラダラと流し、足腰に力が入らなくなった。
次第に視界の端から真っ黒になり、ブラックアウトする寸前に。
すぐにでも座席に座りたかった。
でも、声を出そうとすると吐きそうになる。
いつの間にか小便を漏らしたかのように足元に汗溜まりが出来ていて、それに気付いた近くの人が声をかけてくれた。
そして、その人が目の前に座っていた女子高生に席を空けてくれと頼んでいたが、完全無視されていた。
「次の駅で降りるのでもう大丈夫です。ありがとうございます」
私は何とか言葉にした。
だが、その人は居なかった。
あれ?と思いはしたが、ついに幻覚を見始めたか・・・と変な笑いが込み上げてきた。
電車が止まり、私は次の駅で降りた。
その時、駅のベンチに腰掛けてふと電車を見ると、声をかけてくれたその人が先ほどの女子高生の目の前に立っていて、鬼のような顔をして見下ろしているのが窓から見えた。
発車して行く電車。
その人が鬼のような顔をしながら、女子高生に手を伸ばしているところまで見ていた。
幻覚だとしてもそれが未だに鮮明で、思い出すと怖い。
あの女子高生は大丈夫なのだろうか・・・。
(終)