先祖の恐怖体験は遺伝する
これは、遺伝にまつわるほんのり怖い話。
僕が小学生と中学生の時、月に2~3回の頻度でかなり体調が悪そうなクラスメートがいた。
以下、そのクラスメートの名前を仮に『原田』とする。
原田は中性的な外見で、細身で色白だったこともあり、みんなが「アイツは体が弱いんじゃないか?」と心配していた。
だが、原田自身は「体調が悪いわけではなくて夢見が悪いだけだよ」と言っていた。
なんでも、酷くグロくて嫌な夢を見るらしく、その夢を見た日は気分が悪いのだとか。
僕は原田と比較的仲が良かったので、高校は別になったが、中学卒業後も時々一緒に遊んでいた。
ある時、原田に「そういえばあの夢はまだ見るの?」と聞いたら、原田は真剣な顔になって語りだした。
曰く、あの夢はただの夢ではなく、『先祖の誰かが体験したこと』らしい。
母方の家系の人間がずっと見続けてきた夢で、原田の母親も祖父も同じ夢に悩まされた時期があったのだとか。
原田がその話を母親から聞いた時、他にも母方の家系に伝わっているものの一つ、「ある呪いの方法を教わった」とも言っていた。
呪いの詳細については教えてはくれなかったが、僕は「何が呪いだよ。嫌な夢を見させ続けられる方がよっぽど呪われてるわ」と、自嘲気味に笑いながら言った。
本心では半信半疑だったが、原田本人も「信じても信じなくてもいいよ」と言っていた。
ただ、最近になって『遺伝子にも記憶がある』という説があるのを知った僕は、原田が見ている夢は「この遺伝子の記憶なのではないか?」と思った。
(終)