一緒に死のうと言った彼女の本当の想い
大学1年生の頃、俺は年下の美咲と付き合っていた。※仮名
俺は、美咲のことが好きで好きで堪らなかった。
結婚したいぐらい好きだった。
でも、俺がいくら好きでも長く続かなかった。
付き合って1年ちょっとで美咲が浮気して、その男と付き合うことになり振られた。
俺は人生であれほどまでに「死にたい」と思ったことはなかった。
結局は死ねなかったが。
別れてからもたまにだが、電話をしたりメールのやり取りもあった。
そして1年に1~2回ぐらいは美咲と会っていた。
決して俺から連絡は取らなかったが。
振られてからいうもの、自分からメールや電話、ましては「会おう」など言わなかった。
なぜなら、自分から誘っておいて連絡が来なかったり、ダメと言われたら立ち直れないから。
俺は自分が傷つきたくないだけの臆病者だ。
ただ、大抵電話が来る時は、美咲は泣いていた。
そして、「死にたい」か「一緒に死のう」と言われた。
別れてから2年経った頃のあの時も電話越しに泣いていた。
大量の薬を飲んで自殺を図ったらしい。
美咲と会うと、いつもどこかしらリストカットなどの傷が付いていた。
俺はそんな美咲に少しでも明るくなってもらいたくて、軽い口調で「俺と一緒になろうよ」と言う。
そうすると美咲は必ず、その時だけは暗かった顔を上げて、笑顔で「それはダメ~」と言う。
そんな関係のまま6年が過ぎた。
俺も社会人になって周囲も目まぐるしく変わり、変わらないのは相変わらず俺は美咲が好きだということくらい。
俺には1年に一度の楽しみがあった。
それは毎年の元旦に必ず、美咲からあけおめメールが来ることだ。
別れてからも毎年ちゃんと届くメール。
しかし、別れてから7年目の元旦のこと。
美咲からのあけおめメールが来なかった。
8年目も来なかった。
「美咲、ついに結婚したかな?」と、俺は勝手に思っていた。
でも、実際は違った。
俺は某SNSをやっていて、そこで偶然に美咲の友達と出会った。
元々、お互い顔見知り程度の仲。
さり気なく「最近の美咲どう?」と送ると、「知らないのですか?美咲、2年前に自殺しましたよ」と返ってきた。
俺はもう何も考えられなくなった。
あけおめメールが来なくなったのも、結婚したわけではなく死んだからなのか…と、頭の中が真っ白に。
それでも俺はどうしても、もう一度だけ美咲に会いたくて仕方なかった。
もう死んでいるから会えるわけないが、それこそ本やネットで“死者に会える方法”みたいなものを片っ端から試した。
藁にもすがる気持ちで。
そんなある日のこと。
睡眠中の深夜、暑くて起きた。
すると、ドアの付近に一人の女の子がいた。
顔は髪で隠れていたが、俺はあれが『美咲』だと直感でわかった。
正直、怖かったが。
顔が全く見えない美咲が、ブツブツ言いながら近づいてくる。
最初は何を言っているのかわからなかったが、美咲が近づいた時、ようやく言葉を聞き取れた。
「一緒に死のう」
怖い言葉だが、俺はそれを聞いた時に美咲が可哀想に思えて、怖さもなくなった。
そして、「いいよ。今度こそ一緒になろう」と言った。
言った途端、美咲は近づくのを止めて、髪で隠れていた顔を上げ、俺が大好きだった笑顔で「それはダメ~」と言って消えていった…。
結局あれはなんだったのか。
俺が作り出した幻影なのか、幽霊だったのか、未だにわからない。
ただ一つ言えることは、美咲がいないこの世の中が本当につまらない。
今でも美咲が大好きで、そして美咲に会いたい。
死んだら美咲に会えるかな?
ただ俺は臆病者だから、もし死んで美咲に会えたとしても、断られたら死んでも死にきれない。
そう考えると、やっぱり怖くて死ねない。
(終)
美咲もキミが好きだったんだよ
だから幸せになって欲しい気持ちがあって
一緒に死ねなかったのさ。