自殺の現場に現れた不気味な黒い影
これは、母から聞いた話。
母は昔から、ごく稀に何かを見たり感じたりするようで…。
その日も買い物を終えていつもの道を歩いていると、家の近所の団地が何やら騒がしく人だかりができており、母も気になって見に行くことにした。
その人だかりは心配そうに上を見ており、母も上を見てみると、団地の屋上から飛び降りようとしている男性がいた。
今にも飛び降りそうな男性へ向けて、下から大きな声で説得をしている。
その説得のおかげか、それとも死ぬのが怖くなったのかはわからないが、男性は屋上の端から2、3歩後ろへ下がった。
とりあえず警察や消防が来るまではなんとか持ちこたえるだろう、そう母が思ったその時、“空から何か黒いものが凄い勢いで男性の中へ入っていった”そうで。
次の瞬間、男性は何のためらいもなく屋上から飛び降り、自殺した。
『自殺の名所と呼ばれる場所に近づくと連れて行かれる』
そんな風説もたまに聞くが、「もしかしたら連れて行こうとしている者とは、その場で亡くなった人ではなく、あの黒い何かではないか?」と母は言っていた。
(終)
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