もう一度住めと言われたら無理な家
これは、『幽霊屋敷』に住んでいた時の話です。
これまでの人生で心霊現象らしきものは、川遊びと今から話す体験のみです。
そんな霊感がまったくない私でも、“明らかにおかしい”とわかりました。
家鳴りや何かしらの階段の上り下りはしょっちゅうで、人がいないのにテレビが勝手についたり、出した覚えのない水が出っ放しだったり。
霊感のない私たち住人より敏感な出入りする人たちは、自主的に盛り塩三昧。
商売繁盛の神棚のために呼んだ神主さんまでも、商売繁盛どころではないと訪問を本気で嫌がる始末。
後から知ったのですが、よくある3ヶ月以上住み続けたことがないと言われる、典型的な幽霊屋敷でした。
友人は一度招待すると二度は来てくれませんでした。
曰く、ポスターの人物は目つきが悪くなっていたり、トイレの帰りに足音に追いかけられるという理由で。
ただ私たち家族はまったく気にせず住んでいました。
変だな?と思ったのは一度だけ。
妹と部屋を交換して寝ていた時、夜中にけたたましくドアを叩かれました。
何があったのかと慌てるくらい激しかったのですが、起きてドアを開けると誰もいない。
眠かったので何事もなかったかのように寝ました。
それほど鈍い私たち家族でしたが、その家を引っ越す時に目にしたものは、さすがに青ざめました。
それは、荷物をまとめている時のことです。
押し入れの荷物を出し終えた時、天井板が外れていることに気づきました。
何気なく覗くと、見えた柱は真っ黒…。
火事の焼け跡そのままに、びっしりと御札が貼られてありました。
その後に調べたところ、真偽は不明ですが火事で一家が亡くなったとか。
この時になってようやく、頻繁な物音やドアを叩かれた経験を恐ろしく感じました。
ただ後で知ったことですが、父は見えていたらしいのです。
夜な夜な睨みつけてくるお婆さんの姿を。
あまり気にしていなかったようですが。
父の部屋の窓ガラスにいつもあった手形は、父が酔って付けたのだとずっと思っていました…。
今、あの家にもう一度住めと言われても、もう無理です。
ちなみに、まだその家はあります。
人も住んでいて、それに結構長く住んでいるようです。
3ヶ月もたないは嘘でしたが、『何かある家』なのは間違いないと思います。
(終)
AIによる概要
この話が伝えたいのは、普段は霊感がなくとも、特定の場所や状況では説明のつかない不思議な出来事に遭遇し、その場所の背景や真実を知ることで恐怖を実感することがある、という点です。一見平穏に見える日常の中に潜む異常性や、気にしないことでやり過ごしていたものが、後になって深い意味を持つことを描いています。