田んぼに現れた見てはいけない存在
これは3年前、まだ高校2年だった頃の話。
趣味がロードレーサーで遠出することで、大型連休に入れば、必ず従弟の家へ遊びに行っていた。
夏休みに入ってすぐのこと、従弟の家に向かう途中には一面が田んぼだらけの道があり、そこを走っていたら何か白いものが左の方でうねうねしていた。
はっきりと見えなくて、その時は蜃気楼か何かで作業している人が歪んでいるのかな?くらいにしか思わず、そのまま従弟の家に着いた。
ちょうど昼ご飯時だったので、一緒にご飯を食べながら従弟に何気なくさっき見たうねうねの話をした。
「なんか、田んぼでうねうねしてるの見たわ」
「マジで!見に行かね?」
そんな感じになり、一緒に行くことにした。
二人で自転車を漕いでそこに向かう途中、道の反対側から従弟の父が歩いてきた。
「おお!アキラくん!いらっしゃい。今からどこに行くんだい?」※仮名
「さっき田んぼで変なの見たんすよ。うねうねしてんの。今からそれ見に行きます」
そう言うと、従弟の父は急に険しい顔になり、「絶対に見に行くな。近寄るな。いいな?」と釘を刺された。
ちなみに従弟の父は優しいが怒ると怖いので、そこでは黙って頷き、来た道を一緒に戻った。
しかし、高校生真っ盛りの二人がそんなことを言われたら、余計に気になって仕方ない。
従弟の父が家に入るのを見計らい、二人して全力で自転車を漕いであの道へ向かった。
5分もしないうちに着いた。
というより、いた。
さっきよりも若干大きく、これは蜃気楼ではないなと思った。
「ほら、いたじゃん!あそこ。うっわ、めっちゃうねうねしとるわ」
「やっべぇ!マジだわ」
話しているうちにもだんだん大きくなっているように感じたが、この時はまだ気のせいだと思っていた。
そのうち、明らかにさっきよりも大きくなっていることに気がついた。
「なんかこっち来てね?気味悪いわ」
「ホントだ。気持ち悪いな」
気味が悪くなって二人して自転車に跨った瞬間、ガサッと音がした。
振り向いて見るも、誰もいない。
よく見れば、うねうねもいない。
とりあえず二人で帰ることにした。
帰り道をダベりながらゆっくりと自転車で走っていると、今度は右の方にこちらと同じくらいの速さで動いているものがいる。
それは、うねうねしながら移動を続けていた。
冷や汗が止まらなかった。
得体の知れない恐怖感から逃げようと、必死で自転車を漕いだ。
そして家に着いた。
ただ、家の前には従弟の父が立っていて、「行ったな?見たな?」と言われ、ゲンコツをもらった。
その後すぐ家の中に引っ張られ、塩と酒をぶっかけられた。
それに夏だというのに窓とカーテンを全部締め切り、部屋で正座をさせられ、ひと呼吸おいて従弟の父は言う。
「お前らは見てはいけないものを見た。今日それはこの近くにやって来るだろうが、家の中には入って来ない。だが、お前らを見つければ間違いなく連れ去ろうとしてくる。だから今日はカーテンを絶対に開けるな。外を見るな。それだけだ」
最初は何だかよくわからなかったが、マズいものを見たということだけは理解できた。
その日は風呂も入れず、トイレはペットボトルで、なにより汗臭くて嫌になりそうだったが、夜中の3時を回った頃からそんなものは吹っ飛んだ。
外から「ザッザッザザッザ…」と不規則な音が聞こえてくる。
気になって仕方ない。
開けたい。
開けたい。
開けたい。
そうは思うが、従弟の父がいる前でそんなことを出来るはずもなく、気がつくと寝てしまって朝になっていた。
正直、昨日の夜のわくわく感は半端なかったが、朝になって思い出すと、とても気味が悪かった。
従弟の父いわく、「あれは人が見ていいもんじゃねえんだ。注視すっとな、気持ちを引き込まれて帰って来れなくなるんだ。良かったな、遠くにいて」とのこと。
ほっとしたと同時に、カーテンの向こうが気になった。
開けてみると、庭の土が不規則な足跡でいっぱいになっていた。
また鳥肌と冷や汗が止まらなかった。
結局その日の昼間に、従弟の父の軽トラに自転車を乗せて送ってもらった。
とてもじゃないが田んぼを見る気にはならなかった。
それ以来、従弟の家には怖くて行けていない。
(終)
AIによる概要
この話は、語り手が高校2年生のとき、従弟の家に向かう途中で体験した得体の知れない出来事を描いています。語り手は、田んぼで不気味な「うねうね」と動く白いものを見かけ、興味本位で従弟と再度確認しに行くことにしました。しかし、途中で従弟の父から「絶対に近寄るな」と厳しく警告されます。それにも関わらず、2人は無視して田んぼに向かい、再びうねうねした物体を目撃。恐怖を感じて逃げ帰りますが、従弟の父に叱られ、塩と酒で清められました。その夜、家の外から不規則な音が聞こえてくるなど不気味な体験が続きます。翌朝、庭には不規則な足跡が残っており、従弟の父から「人が見てはいけないものだった」と諭されました。それ以来、語り手は従弟の家に行けなくなってしまいました。