幽霊に足は本当にないの?
よくある話ですが、その家でも『足音』が存在していました。
ルートは決まっていて、自分の寝室のドアが開く音がすると、足音が始まります。
居間を抜け、玄関へと続く廊下を通り、玄関脇のトイレのドアを開け、そこで足音は消えるのです。
しかし、この足音は、台所のテーブルに座っていないと聞こえません。
妹が初めて聞いたとき、最初は私の足音だと思っていたようです。
「長いトイレだなぁ。お腹でも壊したのかなぁ?」くらいにしか考えていませんでした。
しかし、ふと冷静になり、家にいるのは自分ひとりだけだと気がつき、愕然としたそうです。
妹は怖くて黙っていましたが、当然、私も足音を聞くときが訪れました。
パターンはいつも同じ。
その日も私は台所にいて、ふと耳を澄ますと、寝室のドアが開く音がしました。
後日、「幽霊屋敷」と呼ぶようになった友人たちに足音の話をすると、面白半分で「俺たちにも聞かせてくれ」と言い出しました。
そこで、友人たちを家に招待することに。
私と友人3人で台所に陣取り、雑談をしていると、いつもの足音が始まりました。
友A「なんか足音しない?」
友B「ああ、するね」
友C「……」
私「今、どこ歩いてる?」
友A「居間かな」
私「今、廊下歩いてるよね?」
友B「うん…」
私「トイレのドアが開く音がするよ。閉めないけど」
友ABC「……」
私「家には私ら4人しかいないよね? 誰か見てくる?」
友ABC「……」
でも、人間って不思議なもので、実害がないと慣れてしまうのです。
足音がしても、「あぁ、またか」くらいにしか思わなくなりました。
しかしある日、妹と2人で居間にいて、向かい合って話していたときのことです。
台所にいるときにしか聞こえないはずの足音が、突然聞こえてきました。
(あれ? いつものパターンじゃない)
そう思って妹の顔を見ると、彼女は私の後ろを見たまま青ざめ、固まっています。
「おい!」と声をかけようとした瞬間、妹の視線の先が気になり、ゆっくり振り返りました。
幽霊に足がないなんて、嘘です。
膝から下しかない足が、歩いていたのです。
私も、固まりました。
「あぁ、コイツが『足音』の正体か…」
この一件をきっかけに、妹はすぐに一人暮らしを始めました。
私はといえば、家賃が安いのと、あまり家にいないこともあり、数年間住み続けました。
皆さん、覚えておいてください。
幽霊に足がないなんていうのは、”迷信”です。
(終)
AIによる概要
この話が伝えたいことは、「幽霊には足がない」という迷信が必ずしも正しくないこと、そして人は不思議な現象にも慣れてしまうものの、決定的に恐ろしい体験をすると、それぞれ違った反応をするということです。
妹は恐怖に耐えられず家を出ましたが、語り手は家賃の安さを理由に住み続けました。この対比が、人によって恐怖への向き合い方が違うことを示しています。
最後の「幽霊に足がないなんて迷信」という一言が、怖い話でありながらも現実味とユーモアを残し、印象的な締めくくりになっています。