夜中に聞こえた二つの声
今さっきの事だ。
正直、まだ恐怖で震えている。
俺の部屋は、寝室が
マンションの廊下に面していて、
磨りガラスの窓がそこにある。
人が普通に通る昼間は
閉め切ってるが、
人がまず通らない夜中は、
換気するのに時々開けている。
今夜もタバコの煙を換気するため、
開けていた。
遠くに猫の甲高い鳴き声が
聞こえ続けていた。
どこか近所で猫同士が
喧嘩しているようだ。
うるさかったが無視していた。
猫の鳴き声は、
延々30分ほど続いていた。
突如、鳴き声が止まった。
喧嘩が終わったのだろうか。
やれやれと思いつつ、
そろそろ寝ようと、
開いた窓を閉めようと
窓に近付いた時だ。
目の前の30センチほど開いた
窓のすぐ外、
俺から1メートルも
離れていないだろう。
すぐ外から突然、
「こんなによんでるのに
なんでこねえんだよおーーー」
と聞こえた。
男の図太い声だ。
心臓が止まるかと思った。
まるで、部屋の中の俺を
怒鳴りつけるかのように直接響いた。
外に誰かがいるのかと思った。
なんとか立ち直った俺は、
その誰かを挑発せぬよう
恐る恐る窓に近付き、
ゆっくりと閉めた。
カーテンのない窓の外を
寝室から監視しているが、
何の影もない。
とにかく今夜は恐怖で寝られない。
(終)