交通事故の目撃者となった俺の身に
先週のこと。
人が撥ねられる交通事故を、
初めて目撃した。
自転車に乗っていた子供が、
数メートル吹っ飛んでいった。
撥ねられた子供に
目立った血は出ていなかったけど、
うんともすんとも動かない。
子供を撥ねた車の運転手は、
わりと若いOL風の女性だったんだけど、
座り込んでワンワン泣いているだけ。
俺が携帯で救急車を呼んだ。
救急車が到着するまで15分ほど。
人がどんどん集まって来たけど、
みんな何もしないで見ているだけ。
・・・俺だけだった。
ワイシャツを脱いで子供に被せたり、
手枕をしたり。
でもダメだったかも知れないな・・・
到着した救急隊員が俺に、
「ありがとうございました。
でも正直キツイですね・・・」
と言ってきた。
その後の経過は知らない。
だけど何となく、
結論は分かるような気がする。
昨夜、寝苦しく目が覚めたら、
網戸越しからシクシク泣く声が聞こえた。
その瞬間、
あの時の女性だと確信した。
うちのマンションは4階なんだけど・・・
まだあの子供の声が聞こえた方が、
よかったのかも知れない。
その方が救われる。
なぜ、撥ねた女性が俺の元へ・・・
(終)