夏休みの住み込みバイト先の宿にて 2/2

ペンション

 

無事に2週間のバイトを終え、

 

予想以上の働きで書き入れ時に

多大な貢献をしたBさんは、

 

オーナーから臨時手当を貰うと

上機嫌で下宿している寮へ帰りました。

 

翌日の朝、

 

携帯の呼び出し音で目覚めたBさんは、

電話に出ました。

 

B「はい、もしもし」

 

『・・・・・・は・・ど・・・・・』

 

B「え?もしもし?誰?」

 

『・・ぃわは・・どこ?』

 

ガチャッ、ツーツーツー・・・

 

間違い電話かな?と思ったBさんは

気にも留めず、

 

下宿先の自分の部屋で

夏休みの宿題を始めました。

 

次の日の夜。

 

だいぶ宿題もやり終え、

そろそろ寝ようかと思った頃、

 

また携帯に電話がかかって来ました。

 

B「もしも~し」

 

『ぅび・・わはど・・こ・・・・?』

 

B「はい?誰ですか?」

 

『ゆ・・ぃわ・・・・はど・・こ・・?

か・・え・・・・・・て・・・・』

 

いたずら電話?

 

気持ち悪いなぁと思い、

Bさんは電話を切りました。

 

ちょっと嫌な予感を感じながらも、

 

気にしないように努めながら、

Bさんは眠りにつきました。

 

ふと目が覚めると、

夜中の2時でした。

 

喉が渇いたBさんは、

冷蔵庫に手を伸ばそうとした瞬間、

 

携帯が鳴り響きました。

 

誰だ、こんな時間に・・・

○○(彼女)かな・・・

 

と、番号非通知の表示を推理しながら

電話に出ました。

 

B「誰?」

 

『・・ゆびわか・・えし・・・・て・・』

 

B(まさか・・・・)

 

『・・指輪返して・・・・』

 

Bさんは全身に嫌な汗がドッと

噴出してくるのを感じました。

 

思い出したのです。

 

バイト最終日に自分が泊まった

2-2号室を大掃除していた時、

 

ベッドの裏から出てきた

綺麗なトパーズの指輪を・・・

 

その指輪を黙って持ち帰って

来てしまった事を・・・

 

そして、

それを当時付き合っていた彼女に、

 

バイト代で買ったと嘯(うそぶ)いて

プレゼントしてしまったことを・・・

 

『・・・・返して・・ゆ・・び・・・・わ・・・・』

 

この世のものじゃない!

 

電話をブチ切ったBさんは、

 

彼女が心配になり彼女の携帯に

電話をかけましたが、

 

電源が切れているらしく出ません。

 

その後は携帯の電源を切って、

眠れない夜を過ごしました。

 

次の日、

 

朝一番で彼女の家に向かったBさんは、

見てしまいました。

 

風呂場のドアノブで首を吊っていた、

薬指が根元から無くなっている彼女の姿を。

 

彼女の部屋には粉々になった携帯が

散乱していたそうです。

 

Bさんは狂いそうになりながらも、

指輪を探しました。

 

おそらく半狂乱になりどこかに投げ捨てて

しまったであろう彼女だけにしか、

 

いや、彼女さえもどこに投げ捨てたか

理解出来ていないであろう指輪を必死に。

 

「Bさんってどうなったんですか?」

 

と私がサークルの先輩に訊くと、

 

ノイローゼになったBさんは両耳の鼓膜を潰し、

今も精神病院に入院しているそうです。

 

退院してもしばらくするとまた

鼓膜を自ら潰してしまい、

 

入退院を繰返しているそうです。

 

「Bさんとはたまに連絡を取ってるんですか?」

 

と訊くと先輩は、

 

「取ってない・・・

 

いや、取れないって言った方が

正しいのかもな」

 

「どういう意味ですか?」

 

「だってあいつの実家の電話、

今は家族全員が使ってないんだ・・・」

 

偶然見つけた指輪を持ち帰ったために、

 

Bさんの周りでは何か得体の知れないものが

伝染しているのかも知れません。

 

(終)

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