いつの間にか仲良くなっていた白い子
私は保育園に通っていた頃、性別不明の『白い子』といつの間にか仲良くなっていた。
その子は、髪も着ている和服も真っ白で、いつも山の入り口に居た。
私が雪で作る適当な物を、いつも笑って見ていてくれた気がする。
その子のお陰だと思っているけれど、その頃から私たち家族は身の危険から守られていた。
両親はトラックとの正面衝突の事故なのに無傷だったり、変質者に会った時に男がいきなり叫びながら逃げていったり、雪下ろし中の雪に埋もれたのに無事に生還出来たりもした。
謝りたい
そんな事が続くうちに、その子がどんどん黒ずんでいくのに気付いたのは小学校に上がる前だったと思う。
その子が話せない事に気付いたのもその時だった。
その子は、目も口も分からないぐらい黒くなってしまった。
そして、いつからか見えなくなって忘れていった。
あれから20数年が経った去年、久しぶりにその子の夢を見た。
やっぱり黒い。
人影なのかも危ういぐらい黒かった。
次の日だったか、私は頭が痛くて呂律が回らなくなり、手の震えが止まらなかった。
脳外科に連れて行ってもらうと脳梗塞だった。
ただ、詰まっていたのが1センチ程で、点滴を受けて次の日に帰ることが出来た。
今も薬は飲み続けているし病院に通っているけれど、呂律は治ったし手の震えも小さくなった。
そんな時に、気分転換もかねて同人友達が新劇アニメを一緒に見ようと言ってきた。
友達は新劇エヴァにはまりつつ、テレビ版を勧めてきた。
そして渚カヲルが笑った時、「成長していたらこんな顔だったかな」と思うぐらい、雰囲気があの子にそっくりだった。
もう黒くて顔も分からないけれど、全身白くなったら本当に似ている。
なので、テレビ版エヴァが辛くて見れない。
私たち家族のせいで黒くなったのなら、あの子が可哀想すぎる。
謝りたい。
私は妊娠が発覚してから、よくあの頃を思い出す。
保育園に通っている頃に兄が死んでから、悲しすぎて妄想する事が多くなっていたので、あの子はもしかしたら私の脳内だけの友達だったのかもしれない。
(終)
君が何を言ってるのか分かんないよ。