ホテルの監視カメラに映ったもの
これは、以前働いていたホテルでの話です。
ホテルは24時間営業ですが、館内にあるレストランは深夜に閉店作業となります。
22時に閉店し、23時には清掃も終わり、売上を金庫にしまうのが24時。
金庫はホテルの事務所にあるので、金額確認をレストランの責任者と済ませ、サインをして金銭をしまいます。
ある日、24時を回っても売上があがってきませんでした。
そんなことはよくあることで、レシートの合計とドロワー(レジ)の現金が合わないとか、新作の試食会を夜中にやっていることも。
確認のため事務所にある監視カメラをレストランに切り替えると、テーブル席の方で何かが動いていました。
監視カメラは普段4分割で厨房、レジ、テーブル席1、テーブル席2が1つの画面に表示されており、テーブル席2が店の一番奥、厨房から最も離れた位置になります。
画面をテーブル席2に切り替えると、そこで赤いワンピースを着た女性がバタバタともがいていました。
お客様が残っているのに何してる!
私は急いでレストランに向かいました。
しかし、ドアを開けると誰もいません。
奥の厨房は明かりが点いていて、「今日は締めが私だけなのよ。遅くなってゴメンね」と年配の女性スタッフ。
私は少し考えてから、「ドアを空けておくね。何かあったら事務所に来て」とだけ伝えて戻りました。
なにしろ客席の辺りは真っ暗で、たとえ誰か居たとしても見えるとは思えなかったからです。
事務所に戻ってもう一度、監視カメラでレストランを見てみました。
4分割された画面のどこにも異常はありません。
ただ、テーブル席2は真っ暗でした。
気にはなりましたが仕事も残っていたので、いつも通り数秒おきに画面がロビー、レストラン、売店、通路、事務所に切り替わるように設定し直しました。
そして事務所が映った時に、私の頭のすぐ後ろに赤いワンピースを着た女性が映ったのです。
私の後ろにピッタリと。
振り向かなくても気配も感じました。
怖がらずに笑顔で接する!私は接客のプロ!
そう思い、満面の笑顔で振り向きました。
すると、「キャー」と声がして消えてしまったのでした。
夜勤のパートナーに監視カメラに映った幽霊がいた話をしたところ、「あなたは見えてなかったの?いつもいるよ」と、平然と言ってのけました。
そのパートナーは元自衛官で、冗談言うタイプではありません。
「え?何?見えちゃう人?」と聞くと、「昔からよく見てたよ。そのせいで前職は辞めた。このホテルにいるのなんかかわいいもんだよ」と。
確かに、あの「キャー」はね・・・。
でも、かわいい?
(終)