夜中のドライブで信号待ちをしていると
その頃の俺は、
少し車に興味があってね。
仲間と夜な夜な色んな所を
走り回ってたんだ。
その日も、
まあこういう所があるから
皆で行こうってことで、
遠い山道を
延々と走ってたのよ。
そしたら、
途中ポツリと信号があってね。
なんか知らないけど、運悪く
俺だけ取り残されちゃったんだ。
やれやれということで、
タバコを吸おうと不意に横見ると、
うっそうとした森に、
大きい鳥居が見える。
真夜中の神社って不気味だし、
連中は行っちまうし、
早く変わらないかなと思いつつ、
さらに上を見上げたんだ。
そしたらさ・・・。
しめ縄みたいな白いもので
ぐるぐる巻きにされた、
異様にデカイ岩があったんだ。
俺は早くその場から
離れたかったので、
早く変われよと
思い続けていたんだが、
一向に信号の変わる気配はない。
よく見ると、
信号が付いているのは
俺が走ってる道路だけで。
交差する神社に続く小道には、
信号が付いていないではないか。
やばいと思って
走り出そうとした瞬間、
神社と反対の方からゾロゾロと、
人が歩いてくるのが見えた。
慌ててブレーキを踏んで、
その人たちが交差点を
渡り終えるのを待っていた。
みんな特異な格好を
しているわけでもなく、
普通に何人かは
話をしながら道を渡ってゆく。
20人ぐらいの集団だったが、
どうやら神社の方に
向かっているらしい。
ふと、あることに気づいた。
特におかしな格好をしている
わけでもないと思っていたが、
みんな服装がなんとなく古いのだ。
髪型も一時代前の感じだ。
60年代のサイケデリックな感じ。
なんか変だと思いながら
その集団を見送っていると、
神社の上にあったデカイ岩の中に
入ってゆくではないか。
もちろん、岩は大きなただの塊で、
入り口など付いていない。
そこにみんな吸い込まれていく。
本当にやばいと思って
ふと前を見ると、
さっきまであった信号が無い。
これ幸いとばかりにスピードを上げ、
その場を立ち去った。
しばらく走ると、
山道を少し下ったコンビニで
仲間が待っていた。
遅れた理由を話しても、
みんな信じてくれない。
信号などひとつもなく、
走りやすい道だったのこと。
一息つこうとコンビニに入ったところで、
俺は息を飲んだ。
さっきの集団の最後尾にいた男が、
レジで飲み物を買っていた。
髪が長く、バンダナを巻いて、
パンタロンを履いた男が。
驚いて立ち尽くしていると、
その男はすれ違いざまに
「誰にも言うなよ・・・」
とだけ言って、
コンビニを出て行った。
(終)
パンタロン…
パンタロン……