二人組みの女の子をナンパしに灯台へ
「灯台のところに行こう」
二人で灯台の駐車場まで
車で行き、
そこから徒歩で
灯台へと向かいます。
駐車場には同じ様な目的を持つ
車がかなりいるので、
夜の暗さもあまり
気になりませんでした。
駐車場から灯台までの道は
木々が夜空を覆っていて、
月明かりも入らず
真っ暗となります。
前方の灯台の明かりを頼りに
灯台へと行きましたが、
カップルばかりで、
二人組の女の子は居ませんでした。
「吊り橋まで行ってみようか」
伊豆高原の吊り橋の有る場所は、
切り立った岸壁にあります。
岸から向こう岸まで20メートル位の
長さの吊り橋です。
海面からも20メートル位の
高さに掛かっているので、
昼間は下が見えて、
かなりスリルの有る場所です。
夜は下がよく見えませんが、
その高さは知っていますし、
波の砕ける音や
風の音を聞いていると、
一段と怖さが増します。
少し嫌な感じでしたが、
若い女の子の魅力が
その気味悪さを越えていたので、
女の子を求めて
吊り橋に向かいました。
吊り橋に乗る直前で、
「おい、あそこにいるようだぞ」
向こう岸に女の子らしい
人影が見えます。
「行こう」
吊り橋を渡り、
人影がある方へ向かいました。
「二人組だよ」
喜び勇んで近づき、
声を掛けました。
「どこから来たの?」
『東京から』
明るい笑顔の
可愛い女の子でした。
「どこに泊まってるの?」
『お父さんの別荘』
たわいのない話をし、
盛り上がっていました。
「こりゃ、いけるかも知れないな。
俺、小さい方の子な」
「OK~」
二人は、お互い納得し、
別々に連れ出そうと
計画を立てました。
「ちょっと散歩しようよ」
友達が背の小さい子を誘います。
「じゃ、俺達も」
と二人はそれぞれ分かれて
反対方向に歩き出しました。
どこの暗闇に連れ込もうかと
思っていましたが、
ふと後ろが気になり、
友達の方を見ました。
二人仲良く歩いています。
が、よく見ると、
その女の子は
裸足で歩いています。
「あれ?」
自分の連れの
女の子の足元を見ると、
その子も裸足でした。
履いているスカートは、
綺麗でない様に思えました。
『どうしたの?ふふふ・・・』
その子が薄笑いを浮かべて
私に言います。
それを聞いて、
ゾーっとしました。
何か変だ。
友達を呼びました。
「おい、ちょっと来い」
友達は振り返りましたが、
なかなか来ません。
「いいからすぐに来い」
その時、
連れの女の子は私の腕に
自分の腕を組みました。
少し嫌な臭いがしました。
「ちょっと離してくれ」
腕を振り払い、
友達を呼んで、
「この子たち裸足だぜ。
なんか変じゃない?」
友達と二人で、
女の子たちを見ました。
女の子たちは、
こちらを見ながら
含み笑いをしています。
「今日は帰ろう」
納得出来ない様な友達に
真剣な目で訴え、
「今日は都合が悪いから帰るよ」
と女の子たちに言い、
急いで灯台の方向へ
向かいます。
後ろを向くのは怖いので
早歩きで吊り橋を渡り、
渡り終えた後、
後ろを振り返りました。
すると、
断崖絶壁の縁に設置してある
欄干の上に乗って踊っている、
女の子たちの姿が見えました。
「おい、見ろよ。
あんなとこに居るよ。
落ちたら死ぬぞ」
と言っているうちに、
二人は海に
落っこちてしまいました。
驚いた私たちは、
もう一度、吊り橋を
渡ろうとした時、
吊り橋の中間に、女の子が
含み笑いをして立っていました。
「わぁぁ・・・」
急に怖さが増し、
友達と二人で転げるように
駐車場まで逃げました。
駐車場に着くと、
さっきまであんなに沢山いた
車は無く、
友達の車がポツンと1台
有るだけでした。
急いで車に飛び乗り、
発進しました。
ほっと一息つき、
後ろが気になったので
振り返ると、
あんなにダッシュして
走って来たのに、
灯台へ行く道の所に、
あの子たちが立っていました。
あの子たちは
何者だったのでしょうか。
この世の人では
無かったのでしょうか。
確かに、
海に落ちたのを見ました。
あの暗い中で、
吊り橋の中央に立った
女の子たちの含み笑いの顔が、
良く見えたのも印象的です。
その後、
ナンパ場所として、
夜の灯台や吊り橋には
近寄っていません。
夏の夜の不思議な体験でした。
(終)