姉ちゃんが体験した昨夜の出来事
真冬の物凄い寒かったある夜に、
俺の姉ちゃんが体験した話。
姉ちゃんがベッドに寝ていると、
頭の横で何かバタバタと音がした。
「うるさいなあ・・・」
と思いつつ、
何かを確認しようと目を開けようとしたが、
目が開かない。
それと同時に、
バタバタという音がだんだんデカくなる。
「うわー、何?何?」
姉ちゃんが焦っていると、
いきなりその何かが胸に乗ってきた。
ピョンピョン跳ねて、
キャッキャッ笑っているらしい。
明らかに小さい女の子の声だ。
もの凄い汗をかきながら、
訳わかんない念仏を唱えていると、
『目を開けてみて』
と声がした。
姉ちゃんは、
「開けられません・・・」
と呟いてみると、
その何かが、
『目を開けて寝ると、
まーるいお菓子が貰えてね。
大丈夫なの。
だからまーるいお菓子が貰えてね、
大丈夫なの』
と繰り返す。
姉ちゃんは無理だと思いつつ
目を開けてみると、
そこにはどこにでもいそうな女の子が、
馬乗りになって姉ちゃんの上に乗っている。
姉ちゃんは気が遠くなり、
そのまま意識がなくなった。
次の日の朝、
姉ちゃんにその話を聞いた。
「ねぇーよ(笑)」
と俺は笑いながら茶化した。
「そうだよね~?すまん(笑)」
姉ちゃんも笑っていた。
それが姉ちゃんと喋った、
最後の会話だった。
姉ちゃんはその日の通学中に、
車にひかれて死んだ。
目を見開いたまんまで。
葬式の時にお供え物の準備をしていると、
親戚の女の子が俺のところに走ってきた。
「これね、みっちゃんがね、
お兄ちゃんに渡してって」
と言うから、
俺はてっきりその見知らぬ親戚の
みっちゃんて子が、
俺にお菓子をくれたんだなと思って、
ありがとうって受け取った。
「みっちゃんって誰?」
女の子に聞いてみると、
「みっちゃんはね、
押し入れの中に住んでるから、
外に出れないんだって。
でも、もうすぐ出れるって」
俺はそれ以上、
何も聞けなかった。
女の子のくれたお菓子は、
丸いおまんじゅうだった。
(終)