酷道をのんびり探索して行き着いた先で
休みの日にドライブするのが趣味な俺。
特に山方面の『酷道』をのんびり探索するのが面白い。
※酷道(こくどう)
日本の道路の俗語で、一般国道のうち乗用車による通行が困難であるなど文字通り「酷(ひど)い状態の国道」を、「国道」の読み(こくどう)に引っ掛けて揶揄するものである。(Wikipejiaより引用)
7月初めの曇りの日、諏訪湖の方角に行ってみた。
じゃあ、俺が見たのは・・・
長野県に入った辺りから、雨が降り出して視界が悪くなった。
このままでは危ないので引き返そうと思った。
しかし、どうにもUターンが出来そうな場所が無く、仕方なく脇道に入り大回りする。
が、どんどん道が細くなり、行き止まりになるのではないかとハラハラした。
峠を越えて下りになった。
急なカーブをいくつも通過し、集落に辿り着くことが出来た。
少し広い場所に片寄せて、ナビと地図を確認する。
この先数キロで幹線道路に出られるようだ。
よし、行くべ!
多少のスリルが味わえたことで高揚し、いい気になっていた。
走り出してすぐに「ゴンッ」と前輪が跳ね上がり、ガリガリと底を擦(こす)る。
ブオーンッ!!と空転した。
側溝が道を横断していて、その蓋がほとんど割れていた。
前輪が二つとも嵌り、車体が地面にへばり付いている。
バックしたりハンドルを切ったりしてみたが、全くダメだった。
青くなりながら、最終手段のJAFを呼ぶことにした。
しかし、携帯が繋がらない。
仕方なくハザードを点けっ放しにして集落の方へ戻ってみる。
携帯の電波が届くかもしれない、と思った。
が、圏外表示が消えることは無く、おそらく集落の中心であろう所まで来てしまった。
こうなったら何処かで電話を借りようと周りを見渡すが、人が居る気配がない。
段々畑のすぐ上にある農家が一番近いようだ。
不審人物に見えないよう、大きな玄関にたどり着く。
「すみませ~ん。ごめんくださ~い」
反応が無い。
縁側の方にまわってみる。
そこでもう一度呼びかけてみるが、やはり反応が無い。
道の向かい側にも古い農家があることに気が付いた。
今度はそちらに助けを求めてふらふらと近付く。
「すんませ~ん!ごめんなさーい!もしもーし!」
一瞬、台所らしき窓に人影が見えた気がした。
御老人がおられるようだ。
良かった、人が居た。
しかし、玄関にたどり着いてギョッとした。
扉が完全に外れて内側や外側に倒れている。(昨日今日壊れたものではない)
中も埃まみれで、下駄箱の上の置物やら何やらが散乱している。
怖くなって後戻りし、携帯のアンテナが2本立っていることに気が付いた。
そのおかげでJAFに連絡が出来、1時間程度で隊員が到着した。
JAFの人は黙々と脱輪からの救出を行ない、手続きをしてくれた。
礼を言ってそのままの道を行こうとすると、隊員は慌てて話しかけてきた。
「この先は通行止めですよ」
「あ、そうなんですか?」
「もうこの道は廃道で、無くなる予定ですから来た道から戻って下さい」
「・・・あ、そ、そうなんですか・・・」
「もしかして、酷道ハンターとかいう方ですか?」
「いえ、違います。似たような事していたわけですが・・・」
「気を付けて下さいね。ここは熊とか出ますから」
「は、はい・・・。熊ですか!?」
JAFの車に付いて山を下りながら考えていた。
(じゃあ、俺が見たのは・・・)
今でも謎のままである。
(終)