私はキツネに取り憑かれていたのか?
私が小学3年生の時に、実際に体験した話です。
友人の翔子と幸恵と私の3人で、よく放課後に遊んでいました。(※仮名)
その頃の私達は、色んな公園に行って遊ぶのが大好きでした。
ある日、翔子が「わりと近くにとても長い滑り台がある公園があるらしい」と言うので、その公園を探してみました。
あれはキツネの鳴き声だった
いつもは行かない閑静な住宅街の方へ入っていくと、その公園はありました。
それなりに広い公園で、いくつかの遊具と翔子の情報通りのとても長い滑り台がありました。
また、その公園には小さな神社が併設されていました。
3本の鳥居の先を進むと左右にお稲荷様がいて、さらにその先にはお賽銭箱がありました。
お賽銭箱の先にはちょっと寂れた感じの普通の平屋がありましたが、人の気配はありませんでした。
私達は神社のことなど全く気にせず、公園で遊びました。
私達以外に人はおらず、貸し切り状態でした。
静かな住宅街の中の公園。
周辺は車も通らず、人もいない。
はしゃぐ私達の声はよく響きました。
日が暮れ始め、そろそろ帰ろうかとなった時に、翔子と幸恵が神社に興味を持ちました。
そして、お賽銭箱の先にある平屋の家の玄関の郵便受けから中を覗いてみる、と言い出したのです。
その玄関は引き戸で、戸に郵便受けが付いているもので、確かに中を覗けるだろうとは思いました。
私は2人を止めました。
人の家だし勝手に覗いちゃいけない、と。
しかし、私の忠告を無視して2人は玄関前まで行きました。
私はお稲荷様の前でオロオロしていました。
そして、2人が郵便受けを覗いた瞬間、今まで静かだった周辺でたくさんの音が鳴りました。
車のクラクション、鳥の羽ばたく音、犬の鳴き声。
他の音もあったかもしれませんが、私がハッキリと記憶しているのはこの音だけです。
本当に静かな公園だったので、突然鳴った沢山の音に友人2人はとんでもなく驚き、走ってその場から逃げて行きました。
私もその後を追いました。
帰り道、2人はとても疲れた顔でのろのろと歩いていました。
私は平気でしたが、2人があまりにも憔悴しているので、心配で声をかけました。
すると、2人は「キツネの鳴き声がした」と言うのです。
それは気のせいだ、色んな音がしてビックリしただけだ、と私は伝えましたが、それでも2人は「あれはキツネの鳴き声だった」と言い張りました。
結局、郵便受けから家の中は覗けなかったそうです。
その後は特に何事もなく家に着き、解散となりました。
次の日。
もともと絵を描くのが好きだった私は、いつも白紙の自由帳を持っていました。
いつもは犬や猫、女の子の絵を描いていた私が、この日からキツネの絵を描き始めました。
何を思っていたのかは分かりませんが、ノートいっぱいにキツネを描いていました。
リアルな絵ではなく、子供が描く稚拙な絵でしたが。
当時は何も思っていませんでしたが、18歳の時に何気なく知り合いにこの話をすると、「それはキツネに取り憑かれていたんじゃないの?」と言われました。
でも当時は1年程はキツネの絵を描き続けましたが、その後はまた女の子の絵を描き出しましたし、友人2人にも何かあったということもありません。
あの時、私は本当にキツネに取り憑かれていたのでしょうか・・・。
(終)