わざわざウチに死にに来る
これは、知り合いの話。
彼女の家は街外れにある。
山からはかなり離れているのに、何故か山の動物がよく現れるのだという。
それも、決まって『死体』で。
状況からするとどう考えても、動物が庭に自分から入り込み、そしてそこで息絶えたとしか思えないのだそうだ。
彼女は一度だけ、その現場を直接見たことがあるという。
痩せた狐が垣根の間から入り込んできて、庭で腰を下ろした。
そこは彼女の部屋の真前で、机に座っていた彼女と窓越しに目が合った。
次の瞬間、パタリと倒れて動かなくなる。
庭に出てみると、狐は既に死んでいた。
「何でみんな、わざわざウチに死にに来るのよ!?」
悲しそうな顔で彼女は嘆いていた。
(終)
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