大袈裟でワザとらしく揺れるヤツデの葉
私の家は同じ敷地内に、父を見送って一人暮らしをしている母の家と、娘夫婦である私の家が背中合わせに建っている。
これは、去年の夏のこと。
朝食後にキッチンで洗い物をしていると、目の端で何かがチラチラと動いていた。
見ると、窓の外のヤツデの葉がたった一枚だけ、まるで誰かが揺らしているかのようにワサワサと動いている。
風もなく、怪訝に思って窓を開けて外を覗くと、母の家のトイレにオレンジ色の電気がついているのが見えた。
母は節約家で、昼間にトイレの電気をつけることは絶対にない。
私はすぐに「おかしい!」とピンときて、合鍵を持ってスッ飛んで行った。
すると、トイレの半開きドアの隙間から、倒れている母の足が見えた。
脳卒中だった。
夜中にトイレに起きて、突然倒れてしまったんだそう。
幸いすぐに救急車を呼んで、一命を取り留めた。
後から思うと、あのヤツデの葉は亡くなった父が母の急を私に知らせようとして動かしていたんじゃないか?という気がした。
霊感がある人なら、ヤツデの前に父の姿が見えたのだろう。
見えるものなら私も見たかった。
あの大袈裟でワザとらしい葉の揺れ方を思い出すと、父も必死だったんだろうなあ、と少し可笑しくなる。
(終)