寝ていると、じっと枕元に座る女の幽霊
3年くらい前、兄の友人のマンションに「女の幽霊が出る」と聞いた。
兄とその友人は幼馴染み。
幽霊対策として兄が泊まったり、友人が兄の部屋に泊まって兄は友人の部屋に、と交替で寝てみたが、兄が居る日には幽霊は現れない。
友人曰く、その幽霊の女は20歳くらいで丸顔で丸い目、髪は肩まであって白っぽいセーターを着ていて、友人が寝ていると、じっと枕元に座るという。
面食いの霊
毎日のように枕元に座られた友人は、酷く寝不足になった。
大家さんなどに話を聞いてみたが、事件や事故もなく、「幽霊が出るような不穏な部屋ではない」と言われたそう。
兄は寝不足の友人のために、自分のマンションの部屋と友人部屋をしばらく交換する事にして1週間ほど過ごした。
しかし、やはり一度も女は枕元に座らず、何も起きないままだった。
だがある夜、兄はベッドに寝転がりながらボソッと「ここペット飼えるんだよなあ。俺が住もうかなあ」と独り言を言った。
兄が住むマンションはペット不可。
すると、「えっ?」と言う女性の声がした。
兄も思わず「えっ?」と言うと、さらに女性のかすれたすすり泣きが聞こえた。
兄は再度、「俺、ここに住むわ!猫飼うし!」と一人で宣言してみた。
次の瞬間、兄の耳元にサラっと冷たい風が吹き、玄関のドアがガタンと揺れた。
それから数日して友人は戻ったが、それきり女の幽霊が現れる事はなかった。
結局、友人はしばらくしてから引っ越したが、現在その部屋には兄が本当に住んでいる。
兄の友人は確かにイケメンなのだが、『面食いの霊』も、いるのかもしれない。
(終)